《埼玉本庄5歳児虐待死》事件を主導した‟悪女”石井陽子55歳の‟ウソまみれ人生”「21歳サバをよんでいた」「‟中村葵”なる別人に成りすまし…」《明日判決》
〈 《埼玉本庄5歳児虐待死事件》「いらねえよ、お前」歩夢くんを激痛と絶望の果てに死なせた‟被告夫婦”が別に起こした‟4歳児童暴行事件” 〉から続く
2022年3月、埼玉県本庄市の借家の床下から虐待死した柿本歩夢くん(当時5)の遺体が発見された事件。
傷害致死、死体遺棄などの罪に問われた実母の柿本知香(31)、無職の丹羽洋樹(36)と石井陽子(55)——3被告のうち、知香と丹羽の裁判員裁判がさいたま地裁で9月1日、結審した。検察側は知香に懲役12年、丹羽に懲役15年を求刑。判決は9月8日に言い渡される。
4歳から非道な仕打ちを受け続け、5歳で殺害された歩夢くん
大人3人による「躾」の名を借りた虐待は、柿本母子が石井らの家に居候を始めた2021年1月から始まっていた( 「麻原彰晃みたいと笑われて…」ヘッドキャップをかぶせた“5歳の我が子”を繰り返し畳に叩きつけた‟子殺し母”の「悪魔のカウントダウン」 )。
当時、歩夢くんは4歳。本来であれば、周囲の愛情を注がれ、すくすくと成長していくはずの時期だ。だが、歩夢くんは些細なことをきっかけに大人たちから問い詰められ、平手打ちや逆さ吊りなどの暴力を浴び、樽状の雨水タンクや猫用ケージに押し込められるといった非道な仕打ちを受けてきた。
そして2022年1月18日、知香と丹羽から凄絶な暴行を受け、惨死させられたのだ。その亡骸は、犯行現場となった借家の床下の土中に埋め隠された( 暴行死した歩夢くんの遺体を裸にし、‟生ゴミ発酵促進剤”をふりかけ土中に…“悪魔じみた提案”を受け入れた実母「涙の告白」 )。
夫と母親を操り、一連の犯行を主導してきた石井陽子
丹羽と知香の裁判では、一連の犯行を「石井が主導した」という点で、主張が一致している。2人の証言によれば、歩夢くんの死亡当日も、石井は暴行を指示した一方、119番通報を拒み、歩夢くんの遺体を床下に埋めようと提案。その後は知香を懐柔し、出頭を考えた丹羽も丸め込んだ( 「いらねえよ、お前」歩夢くんを激痛と絶望の果てに死なせた‟被告夫婦”が別に起こした‟4歳児童暴行事件” )。
もとより、石井の存在なくして歩夢くんの悲劇は起こり得なかった。内縁の夫である丹羽にさえ、本名、実年齢、経歴を偽って交際を続けてきた事件の黒幕——。虚飾に塗れた石井の正体に迫る前に、法廷では明かされなかった、傷害致死事件後の丹羽と石井の行動に触れておきたい。
丹羽が借金する際も背後で糸を引いていた石井
歩夢くんの死から約1時間が経過した18日午後9時頃。丹羽は親友のAさんにこんなLINEのメッセージを送信した。
〈ちょっと助けてほしい〉
金を無心する内容だった。希望額は20万円。Aさんは「それは無理」と伝えたが、翌日の19日、石井を乗せた車を駆り、本庄からAさんの住む街まで金を借りにやってきたという。その日の朝、歩夢くんの遺体を本庄の家の床下に埋めてきたことなど、Aさんは知る由もない。丹羽は泣きながら次のように釈明した。
「職場で同僚とトラブルになり、相手を殴って病院送りにしてしまった。『訴える』と言われていて、示談で済ませたい。相手の要求額は150万円で、かき集めたけど、まだ足りない。もし逮捕されたら、出てくるまで待ってほしい」
その隣で、石井が切迫感をアシストする。
「足りない分は月々の分割払いにしてもらえるよう、ダメかもしれないけど、相手に頭を下げに行こうよ」
この時、丹羽と石井は無職。実在しない職場のトラブルをでっち上げ、親友から金を騙し取ろうとしていたのだ。丹羽は石井と交際後、勤めていた会社を辞め、本庄市に転居後はホームセンターなどで働いていたが、腰痛を理由に仕事は長続きせず。これまでもAさんをはじめ、友人たちから「投資詐欺に遭った」などの理由で借金を重ねていた。常に背後で糸を引いていたのが石井である。
21歳サバを読んでいた55歳「老けて見えるなら、白血病の治療の副作用」
東京都練馬区で育った丹羽は、一般的な家庭の1人息子。中3からラグビーを始め、ラグビー強豪校に進学。高2の時には花園にも出場している。拓殖大学2年の頃にmixiを通じて知り合ったのが「中村葵」と名乗る石井だった。自称「保育士の資格を持つ家事手伝い」で、丹羽の1つ下。つまり、21歳もサバを読んでいたことになる。
「丹羽からカノジョとして紹介された石井は『老けて見えるとしたら、白血病の治療をした時の副作用のせい』と言っていました。フェリス女学院を出たお嬢様で、実家は渋谷区の広尾ガーデンヒルズ。父親は会社をいくつも持っている大社長、料理人の祖父は道場六三郎の師匠だったと。丹羽は『俺はこの女と結婚して大金持ちになる』と自慢していましたが、“アオイ”の方は、厳格な父に丹羽との結婚を反対され、駆け落ちして一緒にいるので、実家の資金力は頼れないんだと話していました」(丹羽の同級生)
公判まで石井の嘘を全て信じ込んだまま、内縁関係を続けた丹羽
公判の証言によれば、2022年3月5日に逮捕されるまで、丹羽は石井の嘘を全て信じ込んでいたという。法廷で丹羽は、石井とは「縁を切る」と述べたが、「これまでの彼女に対する愛情は、正直、否定したくないですが……」と未練も滲ませた。
石井陽子とは何者なのか。実家があったのは広尾ではなく、埼玉県川口市。競艇選手の父とスナックママの母を持つ海千山千の“悪女”だった。地元の旧友が打ち明ける。
「陽子は子供の頃から口が上手く、虚言癖があったので、いつか詐欺か何かで捕まるんじゃないかとは思っていましたが……。小学校の頃は、母親が経営するスナックの2階で暮らしていました。家では、いつも母親から怒鳴られていた覚えがあります。『早く風呂を洗え! 垢が浮いてるだろ!』とか。その前は四国か中国地方に住んでいたようで、途中から弟も呼び寄せられたんですが、陽子は自分が母親にされていたように、弟をこき使うようになりました。勉強はできませんでしたけど、小学校の林間学校では、ジュディ・オングの『魅せられて』を熱唱。歌手になればいいのに、とみんなに言われていました」
競艇選手の有望株だった夫を、多額の借金で自殺にまで追い詰めて
石井は19歳の時、父と師弟関係にある9歳年上の競艇選手の男性と結婚し、二女を出産する。夫は年間3000万円近い賞金を稼ぐこともある有望株だった。
「当時、陽子の金遣いはとても荒かったです。タクシーに乗ってワンメーターで降り、1万円を出して『お釣りはいらない』と言ってみたり、水槽のある魚屋で高級食材のアワビを全部買ってみたり。家族が住んでいた川口市内のマンションで、一緒に夫のレースを見たことがあるんですが、負けてしまって、『ここで勝ったら100万円のダイヤの指輪を買ってもらえたのに!』と自慢交じりに悔しがっていました」(石井の友人)
ところが——。結婚から10年余りが経過した1998年、夫は40歳の若さでこの世を去ってしまう。地元の住民が明かす。
「自殺でした。妻の陽子が作った多額の借金が原因で、首を吊ったと聞いています。お葬式の後、陽子さんは夫の遺骨を放置したまま、お寺と音信不通になりました。遺骨は今もお寺に預けられたままだそうです」
一方で、石井は夫が存命中から次の標的を定めていた。前出の旧友が語る。
小学校の同級生と再婚、自宅不動産は1年も経たないうちに売却
「最初の夫が亡くなる前から『うちは仮面夫婦なの』と言っていました。そこで目をつけていたのが、小学校のある同級生でした。庭も広いお屋敷に住んでいる素封家の息子さんで、真面目な大人しい未婚の男性です。陽子は彼に近づくために、小学校の同窓会を企画しました。資産目当てだったんだと思います。そして同窓会で彼と再会した後、2人が駆け落ちしていなくなった時期がありました。戻ってきてすぐ、再婚したようです」
嫁ぎ先の近隣住民が振り返る。
「しっかり者で裕福な両親と独身の息子さんの3人暮らし。いつの間にか、息子さんが2人の娘を連れた女の人と一緒になっていました。結婚してすぐ、お父さんが病気で亡くなり、自宅不動産は息子さんが相続しましたが、1年も経たないうちに売却され、一家は挨拶もなく、夜逃げするように居なくなってしまったんです。息子の嫁さん、その陽子という女が、多額の借金を作っていたと噂になりました」
白骨状態で掘り起こされたもう一つの遺体
前述のように、石井が「中村葵」なる別人に成りすまし、mixiを通じて大学生の丹羽と接点を持ったのは2007年頃。2人の交際が始まったのは、丹羽が社会人になってからだという。前出の丹羽の親友Aさんが打ち明ける。
「丹羽は大学卒業後、鉄鋼関係の会社に就職して、会社が借り上げた千葉県浦安市の賃貸住宅に住んでいました。そこに遊びに行った時、“アオイ”と名乗る石井が、すでにカノジョとして転がり込んでいました。実家は金持ちだけど、飛び出してきて丹羽のところに身を寄せているんだと」
丹羽の部屋には、もう一人、別の同居人がいた。
「認知症の兆候のあるというお婆ちゃんです。石井の“オバ”だといい、『家を追い出されて私を頼って来たので、ここで暮らすようになった』と説明されました。次に遊びに行った時、埼玉の本庄に家を借りて療養させようかという話も出ていました」(同前)
その老女こそ、歩夢くん事件発覚後、本庄の借家の床下から白骨状態で掘り起こされたもう一つの遺体——、石井の再婚相手である真面目な元同級生の母だった。
(#6は近日公開)
(「週刊文春」編集部/週刊文春)
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