オリンピックの33競技を専門家が解説! 親子で楽しむ「東京2020」 第1回 バドミントン
東京2020はさまざまなスポーツをお子さんとともに楽しめるまたとないチャンスです。そこで、子どもの運動能力向上に詳しいスポーツトレーナー・遠山健太が各競技に精通した専門家とともにナビゲート! 全33競技の特徴や魅力を知って、今から東京2020を楽しみましょう。今回は「バドミントン」! 競技解説はバドミントンのジュニア育成に情熱を注ぐ近藤洋さんです。
○バドミントンの特徴
バドミントンとは、1.55mのネット越しにラケットでシャトルを打ち合い、6.1m×13.4mのコート上で得点を競う競技です。種目としてはテニスと同じように、シングルス、ダブルス、ミックスダブルスがあります。
バドミントンの最大の特徴は使用するシャトルにあります。シャトルは羽毛をコルクに植え込んだものですが、わずか5g前後と軽いため、打ったときの反発力と羽根の特性から、300km/hをゆうに超えるスピードを出すことができるのです。ちなみに世界最高速スマッシュはなんと初速493km/h! その一方で、打球が相手コートに届く頃には、空気抵抗を受けて急激に減速し、0km/hに近づくショットになることもあります。つまりバドミントンは、そういったスピードの緩急を利用し、さまざまなショットを駆使しながら、相手の意表をつくショットやコースを狙う、極めて戦略性の高い競技なのです。
○バドミントンを観戦するときのポイント
バドミントンの魅力は、シャトルの特性を生かした多彩なショットです。迫力のある「ジャンピングスマッシュ」のほかにも、ネットに絡みつくような「ヘアピンショット」、テニスのスライスのように曲がりながら急激に沈み込む「カットショット」、決定打になりやすい「クロスヘアピンショット」、ラケット面だけを変化させて逆コースをつく「リバースカット」など、いわゆる必殺技的なショットが豊富。試合ではそういったショットを相手の体勢や位置を見極めて駆使していきますが、そのときの心理面も含めた駆け引きが一番の見どころです。
また、非常に小さいアクションでシャトルを飛ばすことができるため、デセプション(騙し、いわゆるフェイント)が頻繁に行われる点も見逃せません。前に落とす振りをして後ろへ追い込むショットや、ストレートに打つふりをしてクロスへ打つなどのデセプションが、特にシングルスで頻繁に行われます。女子シングルスA代表の山口茜選手はトリッキーなプレーが注目される選手です。
また、男子ダブルスは、激しいラリーの応酬が最高の見せ場です。その激しさを物語るデータがあります。ラリー時間は平均6.5秒くらいですが、その中で行うストロークは平均9.7回。つまり、1秒に1.5回ものストロークを行っていることになります。男子ダブルス世界ランキング2位の園田啓悟・嘉村健士ペアは低空戦を得意としていて、シャトルを上に上げることが少ないので、その高速ラリーは目で追っても追いきれないほどです。
○東京2020でのチームジャパンの展望
近年、バドミントン日本代表チームは、中国やインドネシアといった世界の強豪と比べても見劣りしない実力をつけてきました。それが世界ランキングにも表れています。男子シングルス1位の桃田賢斗選手をはじめ、女子シングルスはランキング10位以内に2選手、男子ダブルスは2組、女子ダブルスに至っては、リオオリンピック金メダリストの高橋礼華・松友美佐紀ペア(通称タカマツペア)を含め、10位以内に4組も入るなど、世界で勝つより国内で勝つほうが難しいと言われるほど! ミックスダブルスの強化も始まり、渡辺勇大・東野有紗ペアが国際大会で優勝するなど力をつけてきています。東京2020でもすべての種目でメダルが期待できる日本チーム、その活躍が楽しみですね(※)。
また、東京パラリンピックはパラバドミントンの記念すべき第一回大会となります。車椅子女子(WH1)の山崎悠麻選手、女子上肢障害(SU5)の鈴木亜弥子選手など金メダル候補も! はたして誰が栄えある第一回大会のチャンピオンになるのか、こちらもとても楽しみな戦いです。
○遠山健太からの運動子育てアドバイス
お子さんがバドミントンを競技として始めるなら、小学校の中学年くらいからがおすすめ。低学年まではシャトルをラケットに当てるのが難しい場合が多いので、まずはボール投げや道具を使う運動に慣れましょう。そのうえで、打ち方やフォームを習うと楽しく習得できます。おうちで遊びでやるなら、始めるべき年齢は特にありませんが、この場合も、小さいとラケットに当たらない可能性大。それでもお子さんが楽しくおもしろくできているならOKです。お子さんの様子を見て、始めるタイミングを見極めるとよいでしょう。
※世界ランキングは2019年6月11日現在のもの
○競技解説:近藤洋
ヘルストック代表取締役、練馬区大泉学園パーソナルトレーニングスタジオ「コアリファイン」代表トレーナーとして年間、1,800件を超えるセッションを担当。総合学園ヒューマンスポーツカレッジ非常勤講師、埼玉県バドミントン指導者養成講師、パラリンピックバドミントン日本代表選手2名を担当。
○ナビゲーター:遠山 健太
リトルアスリートクラブ代表。トップアスリートのトレーニングに携わる一方で、ジュニアアスリートの発掘・育成や、子どもの運動教室「リトルアスリートクラブ」のプログラム開発・運営など、子どもの運動能力を育むことに熱心に取り組む。自身、2児の父であり、子どもとともにめぐった公園での運動や子育て経験を生かし、パークマイスター(公園遊びに詳しく、子どもの発育を考えて指導ができるスポーツトレーナー)としても活動している。著書は『スポーツ子育て論』(アスキー新書)、『運動できる子、できない子は6歳までに決まる!』(PHP研究所)、『ママだからできる運動神経がどんどんよくなる子育ての本』(学研プラス)など多数。
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