秋葉原の横断歩道、突如ギョッとしだす人々続出 日本一優しい「標識」が話題に
「足元ばかり見ないで、上を向いて歩こう」とよく言われているが、たとえ普段よく通っている道だとしても、顔を上げるだけで新たな発見があるというケースは決して珍しくない。
以前ツイッターでは、都内某所にて発見された「謎のメッセージ」が話題となっていたのをご存知だろうか。
■顔を上げるだけでなく、さらに上へ
注目を集めていたのは、東京・秋葉原を象徴するといっても過言ではない「ヨドバシカメラ マルチメディアAkiba」の前にある横断歩道。
軽く見回してみたが、これといって特筆する点もなく、顔を上げても何の発見もなさそうだ…と感じたならば、想定しているより、さらに「上」を見てほしい。
件の歩道は信号の逆側に真っ赤な「消火栓」の標識が設置されているのだが、よくよく見ると、こちらには謎のメッセージが記されていたではないか。
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■何だか文章もおかしいぞ…?
しかもその内容というのが、「みさなん おつれまかでさす。 …きづまきしたね?」といった具合に、人気漫画『GANTZ』に登場する謎の黒い球体のような妙にズレた文体で、インパクト抜群。
明らかに日本語として間違っているのだが、その後の文章も「うえを むいていると なにかしら はっけんが あるものです」「きょうも あなたに いいことが ありますように」と、ごく自然に読めてしまうメッセージが記されており、読み終えた後には心が妙にホッコリしてしまった。
文末には「株式会社 太陽巧芸社」という社名・連絡先が表記されていた他、標識の裏側には同社のHPにアクセスできるQRコードが。
果たして件の標識は、どのような意図で掲出されたのか? 好奇心を刺激された記者が同社にコンタクトを取ってみると、衝撃的かつ感動的なエピソードが明らかになったのだ。
■「掲出の理由」に思わず納得
今回の取材に応じてくれたのは、東京都練馬区に本社を構える「太陽巧芸社」の代表取締役・熊谷祥成氏。
同社は屋外広告に関する事業をメインに展開しているのだが、新型コロナウイルスが猛威を奮っている昨今では「外出する人」の数そのものが大きく減少し、屋外広告はモロにその影響を受けてしまう。
昨年5月ごろには「渋谷駅周辺から広告が減っている」として、ツイッターを中心にSNS上で大きな話題となったことも記憶に新しい。
そうした状況を踏まえ、熊谷氏は「とうとう秋葉原を象徴するヨドバシカメラさんの前の(消火栓の)広告にも空きが生じてしまいました」「そこで当社では、件のメッセージを昨年の9月頃から設置するようになったのです」と、広告掲出の経緯を語ってくれたのだ。
■「広告ではない」最高の広告
普通に歩いていただけでは気づかない位置に、一風変わったメッセージを記した件の標識。果たして「広告」としてはどれほどの効果があるのだろうか…。
こちらについて熊谷氏に詳しい話を尋ねてみたところ、「広告としての効果は正直全くないですね」とのことで、電話番号を記載しているにも関わらず、「標識を見た」といった旨の電話もかかってこないそうだ。
というのも実際、同社は件のメッセージを決して損得勘定の「広告」として掲出しているわけではないのだ。
インパクト満載のメッセージについて、熊谷氏は「コロナ禍で街中から広告が次第に減っていってしまう中で、少しでも皆さんが元気になれて、笑顔に慣れるような言葉を届けられれば…という思いから、こちらの文章を掲出しました」と、笑顔で語ってくれた。
なお、記者が10月某日に現地の様子をウォッチしに行ったところ、こちらの標識に気付いたと思しき人もチラホラと見受けられ、そのほとんどが笑顔でスマホカメラを上に向けていた。太陽巧芸社並びに熊谷氏の真摯な思いは、人々の胸にしっかりと届いているのだ。
この日本一ユーモラスで優しい広告は、今日も秋葉原の人々を暖かく見守ってくれていることだろう。
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