練馬区の図書館でスト騒動 「指定管理者導入で運営が崩壊する」非常勤司書が反発
図書館の指定管理者制度導入をめぐり、東京都練馬区と現場の図書館で働く司書たちとの対立が激しさを増している。非常勤の司書たちでつくる労働組合は、納得のできる回答が区側から得られなかった場合、練馬図書館で12月19日と12月26日、ストライキ決行も辞さない構えを示している。
●練馬図書館では9割が図書館専門員、勤続29年の司書も
現在、練馬区には12館の区立図書館があるが、10年前から民間に運営委託する指定管理者制度の導入を進めており、区が直接運営しているのは現在、比較的規模の大きな3館のみとなっている。さらに区側は今年7月、直営館のうち、練馬図書館と石神井図書館にも指定管理者制度を導入する方針を明らかにした。
これに対し、30年にわたって図書館運営を支えてきた非常勤職員の司書で構成する「練馬区立図書館専門員労働組合」は、直営3館の協力体制のもと、練馬区の図書館行政が適切に行われてきたと主張。2館への指定管理者制度導入の撤廃を求め、交渉を続けている。
練馬区の図書館専門員は1988年から設置され、現在では直営館である練馬図書館に32人、同じく直営館の光が丘図書館に25人が働いている。練馬図書館では、全職員のうち9割が図書館専門員であり、レファレンス(調査)担当館として、ネットからレファレンスができるサービスも行なっている。また、光が丘図書館では、通常の選書のほか、指定管理者が運営する区内9館の選書や蔵書チェック、運営状況のモニタリングも担当している。
図書館専門員は1年契約の雇用形態だが、勤続20年以上の専門員も多く、中には最長で勤続29年目の専門員もいる。区の常勤職員と同等の仕事を担い、長年にわたり練馬区の図書館行政を支えてきた歴史がある。
●指定管理者導入撤回を求める署名に1万6400筆
しかし、区側は2020年度から石神井図書館、2023年度から練馬図書館に指定管理者制度を導入する方針を組合に示した。
区側の方針に対し、組合は図書館専門員の雇用と直営3館体制の維持を求め、交渉は平行線をたどっている。練馬図書館の図書館専門員で、組合の広報担当をしている岩村陽恵さんは、「指定管理者制度が拡大してきた際、区側から現在の直営3館体制を提案されました。区内の全図書館を支えられるよう、直営3館を残すということで、組合と交渉を妥結した経緯があります」と話す。
通常、指定管理者として図書館を運営する企業は、3年や5年の契約であり、契約が継続されなければそのノウハウも蓄積されず、長期にわたる図書館運営に適さないという問題点が指摘されている。こうしたことから、岩村さんは区側の方針に懸念を示す。「もしも、指定管理者制度が導入されれば、司書として必要な現場のノウハウが練馬区では保てなくなり、図書館運営の崩壊につながる恐れがあります」
組合側は11月に議会に対し、導入撤回を求める陳情書と約8400筆の署名を提出。学習会を開くなどして、区民にも理解を求め、署名は現在1万6400筆を超えている。
●「ストライキは最終手段。できれば回避したい」
区側は11月、組合との交渉で、図書館専門員を学校図書館へ配置転換することを新たな提案してきた。しかし、組合は学校図書館司書の雇用がさらに不安定であり、公共図書と学校図書館の担う役割の違いを理解していない提案であるとして、これを拒否している。
今後、図書館専門員の雇用をどうするのか、区側と組合の交渉は12月18日夜、大詰めを迎える。もしも、納得のいく回答が得られなかった場合は、12月19日と12月26日(いずれも午前8時半〜10時半)、練馬図書館でストライキを実施する予定だ。
岩村さんは「ストライキは最終手段です。もしもストライキになれば利用者の方にも迷惑をかけてしまいますし、できるだけ交渉の中で回避したいと考えています。話し合いに望みをかけたいと思います」と話している。
(弁護士ドットコムニュース)
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