正当防衛の成立を否定 長男刺殺、元農水次官の懲役6年判決支持 東京高裁

 東京都練馬区の自宅で2019年6月、同居の長男(当時44歳)を刺殺したとして殺人罪に問われた元農林水産事務次官の熊沢英昭被告(77)の控訴審判決で、東京高裁は2日、懲役6年を言い渡した裁判員裁判の1審・東京地裁判決(19年12月)を支持し、被告側の控訴を棄却した。三浦透裁判長は、事件の背景に長男による家庭内暴力があったことは認めつつ、「殺害は何としても避けるべきだった」と述べた。


 弁護側は控訴審で、熊沢被告が事件当日、長男英一郎さんからファイティングポーズをとって「殺すぞ」と言われ、反射的に包丁で刺したと説明。「正当防衛が成立する」と無罪を主張し、仮に成立しない場合でも、熊沢被告が家庭内暴力を振るう英一郎さんを支えていた事情を考えれば、刑が重すぎると訴えていた。

 これに対し高裁は、英一郎さんはファイティングポーズをとっていたとしても素手で、攻撃を加えるような動きはしていなかったとし、「危害を受ける危険が差し迫っていたとは言えない」と正当防衛の成立を否定した。熊沢被告が目立った傷を負わず、英一郎さんの首や胸に多数の傷があったことからすれば「被害者が抵抗する前に、被告がほぼ一方的に攻撃を加えたと考えられる」と判断した。

 熊沢被告は、英一郎さんが母親に暴力を振るった際に勤務先から帰宅したり、英一郎さんの就職先探しに協力したりしており、「長期間の献身的行動が認められる」としつつ、殺害前に医療機関や行政に相談できる可能性があったと指摘。「犯行は強固な殺意に基づく危険な態様で、1審判決の量刑が重すぎるとは言えない」と述べた。

 1、2審判決によると、熊沢被告は19年6月、自宅で英一郎さんを包丁で刺し、失血死させた。【巽賢司】

引用元:BIGLOBEニュース

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