【武蔵大学】「大切なのは、国を超えたお互いの理解だと思う」 日本の朝鮮人虐殺を朗読劇に
関東大震災(一九二三年九月一日)直後、首都圏各地で起きた朝鮮人虐殺。そして現在は、日本と韓国の緊張関係などによる「嫌韓」や在日コリアンへのヘイトスピーチ。「当時と今に共通しているのは、お互いへの理解が足りないこと」-。そんな思いを訴える武蔵大学(東京都練馬区)のゼミ生による朗読劇が今月八日、八千代市で披露された。
(保母哲)
朗読劇を上演したのは、同大三年の永田浩三教授のゼミ生十七人。関東大震災では十万人余の死者・行方不明者が出た上、千葉県内をはじめ各地で、デマなどにより朝鮮人の虐殺が相次いだ。そこでゼミ生は今年四月から研究書や証言・調査記録を読むなどして、オリジナル脚本を制作した。
八日は、地元市民の有志でつくる「千葉県における関東大震災と朝鮮人犠牲者追悼・調査実行委員会」(吉川清代表)の学習会と慰霊祭が八千代市高津の観音寺で営まれ、学生たちが朗読劇「骨は叫ぶ~96年前の記憶~」を初披露。当時の虐殺の様子を、住民が振り返る内容で演じた。
「群集の中の三人が朝鮮人を池に投げ込み、太い丸太棒を持ってきて、生きた人間を餅をつくようにボッタ、ボッタと打ちたたきました」「空き地に、ほとんど裸体に等しい死骸が頭を北にして並べてありました。数は二百五十と聞きました」
四十分余の朗読劇には、軍隊や警察が住民に虐殺を命じたことや、県内では八千代市内でも虐殺があり、地元住民や同実行委の人たちが一九九八年、遺骨を見つけて弔い、翌年に慰霊碑を建立したことも盛り込まれた。
脚本を取りまとめ、朗読劇を演じた糸井明日香さん(20)と志水美穂さん(20)は「当時は自分たちと異質な人を排除しようとしたが、現在も同じことが起きたら-と心配」。当時はデマなどで朝鮮人への悪意が広まったが、「今は会員制交流サイト(SNS)であっという間に海外にまで広がってしまう。大切なのは、国を超えたお互いの理解だと思う」と話した。
学習会では、朗読劇とともに同実行委の委員でもある立教大立教学院史資料センターの宮川英一助教らが講演。宮川さんはスライドを交えながら、関東大震災では朝鮮人や中国人のほか、社会主義者や障害のある人ら日本人への虐殺もあったことなどを説明した。
慰霊祭には在日本朝鮮人総連合会(東京都)の李沂碩(リキソク)・中央顧問も参列。市民ら約九十人とともに焼香した。李顧問はあいさつの中で、在日朝鮮人が当時、関東大震災や米国による空爆・原爆投下で日本人とともに犠牲になったことに触れ「平和への熱い思いはみな同じです」と呼び掛けていた。
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