「すしテロ」監視 くら寿司のAIカメラ、どう思う? ネットに賛否
回転ずしチェーン大手のくら寿司が、AI(人工知能)を活用した回転レーンの監視システムの導入を発表したことを受け、インターネット上などではさまざまな意見が飛び交った。歓迎の声があがる一方、カメラによる監視強化を懸念する声も少なくなかった。
「食事中にカメラで撮影されるのは気持ち良くはないが、迷惑行為を防止するためにはいいことだと思う」。
くら寿司の東京都内にある店舗を訪れた練馬区の会社員女性(25)は「歓迎派」だ。
回転ずし業界では、テーブルに置かれたしょうゆボトルや湯飲みをなめたり、すしにアルコールスプレーを噴射したりする迷惑動画が拡散。回転レーン上を流れる他人が注文したすしやデザートを勝手に食べる動画も多数投稿されており、「すしテロ」と呼ばれているほどだ。
くら寿司の岡本浩之・広報・マーケティング本部長は2日、都内で開いた記者説明会で「迷惑行為によって回転ずしに行きたくない、安心できないといったお客様の声が当社に多数届いている。当社だけではなく回転ずし業界全体の危機だ」と指摘し、客の不安を払拭(ふっしょく)するためにも監視強化は必要だったと強調した。
ただ、SNS(ネット交流サービス)などを見ると、監視強化に対する評価は割れている。くら寿司の対応を「これで迷惑行為の抑止になればいい」と支持する「歓迎派」がいる一方、「無関係な人間まで監視されることになる」と反発する意見も多かった。くら寿司はこうした批判を浴びることを承知のうえで、対応に乗り出さざるを得なかったということだろう。
回転ずし業界は今年に入ってから、立て続けにSNS上で発掘、拡散され続ける「すしテロ」に頭を痛めてきた。各社は対策強化に乗り出してはいるが、迷惑行為とのいたちごっこが続いているのが実情だ。
くら寿司は2021年、各店舗にAIカメラを導入した。客が回転レーンから取った皿をカウントし、会計をスムーズに進める狙いだったが、今回のシステムではこのAIカメラを活用。これによりコストを最小限に抑えることができたという。
ただ、AIカメラで監視できるのは回転レーン上だけ。回転レーン上を流れるすしにかぶせられたカバーが複数回、開閉されるなどの異常を探知することはできるが、テーブルでの様子までは確認できない。
このため同社は5月末までに、テーブルに置いてあるしょうゆなどを客が入れ替わるたびに交換する措置を講じる方針だ。AIカメラに加え、人海戦術を駆使して「安全」を確保する。
あきんどスシローでは回転レーン上に流れる商品を客がタッチパネルで注文したものに限定する措置をとった。他社もガリを小袋にして提供するなどの措置を講じているが、迷惑行為の防止にどこまでつながるかは見通せない状況だ。
回転ずしは、高価なイメージが強かったすしを「庶民の味」にし、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた飲食業界の中で、堅調な実績を残すなど高い人気を誇ってきた。「すしテロ」でそれが一変した。
「回転ずしチェーンが提供してきたリーズナブルなサービスはお客様と店、お客様同士の信頼関係があって成立してきた。そのトライアングルが危機に立たされている。お客様に安心して来店いただける環境を取り戻したい」。くら寿司の岡本氏は危機感を隠さない。「すしテロ」はいまや、回転ずし業界の屋台骨をも揺るがしている。【道下寛子、妹尾直道】
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