豊島園駅に工房をかまえる尺八奏者兼制管師の遠藤鈴匠さんに尺八にかける想いを迫った。

昨今、和楽器バンド桜menといった和楽器ユニットの人気を集めている中で、新進気鋭の和楽器奏者がこの練馬で活躍されていることをご存じでしょうか?今回お邪魔したのは、豊島園駅から徒歩12分のところにある「遠藤晏弘尺八工房」。尺八奏者にして制管師(せいかんし)の遠藤鈴匠(れいしょう)さんにお話を伺った。

曾祖父遠藤晏弘(やすひろ)の代から三代続いている「遠藤晏弘尺八工房」。現在は、鈴匠とともに鈴匠さんの父が三代目遠藤晏弘として、尺八奏者を支えている。

生まれた時から尺八とともに生きてきた鈴匠さん。しかし、幼少期から実際に教わっていたのは、尺八ではなく箏。

「母が箏を弾くので、小学校から帰ってきたら母が演奏してるとかそういうことはよくありましたね。尺八っていうのはあまり小さい時って出来ないんですよね。手の関係とか指が細いので子供用に作れば大丈夫なんですけど…。」

真竹(まだけ)の根に近い部分から7つの節を使うのが一般的で尺八の標準的な長さは「一尺八寸」。
センチメートルに直すと約54cm。ソプラノやアルトリコーダーよりも太い筒状の管に大きな指穴。広い間隔で構成される指穴をふさぐのは子どもには容易ではないのは明らか。そういったこともあって、尺八自体は小学生の時に遊び程度に触れた程度という。

そんなこともあり、中学ではバレーボールに力を入れていたが、転機が訪れる。
高校2年生の時だ。

「兄が大学の和楽器のサークルに入って、そこから私も尺八を本格的に始めるようになりました」

三人兄弟の一番下ということもあり、両親からも家業を継ぐように言われたことはなかったというが、そこからの鈴匠さんの人生はまさに尺八そのもの。大学を卒業後に奏者として、制管師として取り組むようになる。東京藝術大学音楽学部の別科を修了し、尺八制管は三代目に師事。両親からは一旦は社会に出た方がいいのではないかという話があったというが、尺八一本で歩んできた。



本格的に尺八で一生やっていくんだと思ったのはいつだったか聞いてみた。
「そうですね、まぁ、例えば小学生の時とか漠然と将来家の仕事やりたいって思いはありました。そして、藝大とかNHK邦楽技能者育成会に行った時に同い年の尺八演奏家と一緒にやっている中で、同世代の人がプロの演奏家になるのに、同世代の尺八の制管師がいないとダメだろうなと思って。そういう時からですかね。」

そんな制管師の仕事は1本完成させるために熟練した技術と長い月日を要する。
「作業としては、材料を仕入れた物を3年以上室内で寝かせるんですけど、その間に曲がりを直すんですよね、竹っていうのは節のところでちょっと曲がっているのでそれを火で温めテコの原理で曲がりを直すってことをしています。」

三代目と鈴匠さんの2人で1日にこなせる量は大体50本まで。さらにその竹を寝かせ1本が出来上がるまで最低でも2~3ヶ月かかるという。
その中でも一番時間のかかる工程は、竹の中に下地をつけて中の内径を整える作業という。

「昔は下地をほとんどつけてなくて、地無し管ってよばれるものだったんですけど、それだと音程が少し合わない部分があったりだとか、鳴りにくい音があったりするんです。そこで、下地をつけて内径を整えることをよって他の西洋の楽器とセッションしたりする場合でも音程を調整できるようになるんです。」

そうして完成した尺八が全国の尺八奏者を支えている。

また、工房では尺八教室も開かれている。
現在は40代から80代くらいのまでの生徒さんが15人ほどいる。
月1回5,000円(60分)。月2回7,000円(各40分)で指導を受けられ、早い人では1か月足らずでそれなりに演奏することができるようになるとのこと。

尺八の裾野を広げる活動は尺八教室にとどまらない。
鈴匠さんはYouTubeにも演奏動画を定期的にアップしている。
「自分がYouTubeやってるっていうのは色々あるんですけど、一つは他の洋楽器の人達は尺八よりもかなり盛んにやってるんですよね。その中でただ演奏するって人は多いんですけど、その中で楽譜も一緒に出してる人とか、その楽譜を見て一緒に吹いて楽しんでる人とかそういうのが尺八でも普通になれば良いなっていうのがありますね。後は尺八で古典を吹いてる人だと古典しか吹かない人、吹けない人が多いんですけど、そういう人にも自分の知ってる曲を吹いて楽しんでもらえたらなと思って。後は尺八を全く知らない人が知ってる曲を聞いてやってみたいなと思ってくれたら良いなとか。そういうこともあってYouTubeに動画をアップをしているんです。」

尺八を幅広くたくさんの人に触れてもらいたい。
遠藤鈴匠さんの夢は尽きることなく今日も演奏家として、制管師として歩みを進めている。

店舗情報
遠藤晏弘尺八工房
営業時間:9:00~18:00(不定休)
住所:東京都練馬区早宮4-16-12
アクセス:都営大江戸線・西武池袋線「豊島園駅」徒歩約12分

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。