うつぶせ寝の死亡事故、「認可外」が「認可」の4倍 基準の緩さ背景に
全国の保育施設で平成24〜29年の過去6年間、うつぶせ寝による子供の死亡事故が29件発生し、このうち認可外保育施設での事故が23件で約8割を占め、認可保育所(6件)の4倍近くに上っていることが、内閣府の集計で分かった。認可外施設では保育士の少なさから、子供の異変に気付きにくいことが背景にあるとみられる。
東京都内の認可外施設で今月3日に発生した死亡事故でも、職員は約30分にわたって目を離していたと説明。子供の安全性確保に課題が残る現状が改めて浮かび上がった。
8割が認可外
内閣府の「平成29年教育・保育施設等における事故報告集計」によると、24〜29年の睡眠中の死亡事故のうち「うつぶせ寝」は認可保育所で6件、認可外施設で23件発生。施設数は認可保育所が2万3410カ所(29年4月現在)であるのに対し、認可外施設は1万1484カ所(28年3月末現在)と半分以下で、発生率の高さがうかがえる。
過去6年の発生件数は、認可外施設で25年の7件が最多で、27年6件、28年2件、29年1件と続いた。認可保育所は24、25、28年に各2件ずつ起きている。
内閣府が28年3月にまとめたガイドラインでは、乳児の窒息リスクを取り除くために「あおむけに寝かせることが重要」と注意を呼びかけ、「何よりも1人にしない、寝かせ方に配慮を行う、安全な睡眠環境を整える」ことが事故の未然防止につながると指摘している。
過去に不備指摘
「15分ごとに様子を確認するはずだったが、30分ほど目を離してしまった。気付いたら、男児がうつぶせの状態になっていた」
捜査関係者によると、3日に生後6カ月の男児が死亡した東京都練馬区の認可外保育施設「若草ベビールーム」の職員は警視庁石神井署に対し、こう説明している。司法解剖の結果、男児の死因は不詳だったが、警視庁は男児が窒息死した可能性もあるとみて、業務上過失致死容疑も視野に捜査を進めている。
同施設は、子供の名前や年齢、連絡先など最低限の情報があれば預け入れが可能なことから、「急な用事で当日に連絡しても断られたことはない」(利用者)と地域住民に重宝されていた。
ただ、都によると、同施設はこれまでも職員配置の不備などが指摘されていた。今年1月の都の立ち入り調査で、「保育従事者が不足している」「乳幼児突然死症候群の予防への配慮が不足している」ことが判明。都は睡眠中の事故防止対策として、0歳児では5分に1回程度を目安として呼吸を確認することが望ましいと指導していた。
施設側は3月、7項目を改善したとする報告書を提出したが、今回の事故は都が立ち入り調査で改善状況を確認する前に発生。呼吸確認が30分間行われていなかったなどとされることから、都の担当者は「実態を検証する必要がある」との認識を示した。
「潜在保育士活用を」
子供の死亡事故が続く背景として、保育関係者からは自治体による認可外施設の指導監督基準の「緩さ」を指摘する声が上がる。認可保育所では、原則として保育者全員が保育士であることが求められるのに対し、認可外施設ではおおむね3分の1以上が保育士か看護師の有資格者であればよく、無資格の職員も認められている。
全国の保育関係者らでつくる「保育研究所」(東京都新宿区)の村山祐一所長(76)は「認可外施設の現行基準は安全性を担保するには不十分。子供の命を守るという点でみれば、認可外も認可保育所並みの人材配置が必要だ」と指摘する。
村山氏は、約80万人とも推計される、資格を持っていても働いていない「潜在保育士」が復帰しやすくする仕組み作りを急ぐべきだとの考えを示した。保育士は出産や子育てなどで離職するケースが多く、「処遇面を含め労働環境を改善するなど、認可外でも保育の『質』を高めていく工夫が必要だ」と警鐘を鳴らす。
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