回転木馬整備36年、としまえんに巡る思い出…「またどこかで動いてくれれば」
94年の歴史に終止符を打った東京都練馬区の遊園地「としまえん」。31日夜は、園を象徴するアトラクション「カルーセルエルドラド」の最後の運転を一目見ようと、大勢の来園客が集まった。中には、入社以来36年間にわたってメンテナンスを担当した同園の佐藤誠さん(60)の姿もあった。
カルーセルエルドラドは1907年、ドイツ人の設計技師の手で作られた回転木馬。
米ニューヨークの遊園地を経て、としまえんが69年に購入したが、傷みがひどく、修理や塗装で運転開始まで2年かかった。
「こんなに古いものがよく動いているな」。佐藤さんは84年に入社し、初めて目の当たりにした日を覚えている。アールヌーボー様式の優美な外観とは対照的に、内部はモーターとローラーが複雑に組み合わさり、機械好きの琴線に触れた。
設計図は残っておらず、整備方法は先輩の作業を見て学ぶほかなかった。機械に油を差し、摩耗したローラーを取り換え、運転中のかすかな異音に神経をとがらせる——。地味ながらも気の抜けない作業を36年間続けてきた。「一度も故障でエルドラドを止めたことはない」ことが誇りだ。
しかし、閉園日の31日昼過ぎ、運転担当者から「スタート時に変な音がする」と連絡が入った。「最後の最後で……」と焦る気持ちを抑えながら点検したが、始動時にギアのかみ合う音がしただけだった。木馬は再び、客を乗せて優雅に回りだした。
閉園後、エルドラドはいったん解体されて倉庫にしまわれる。「またどこかで動いてくれれば、何年たっても、みんなが『としまえん』のことを思い出してくれるはず」。その時は自分もファンの一人として楽しみたいと思っている。
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