クラスター対策に欠かせない「ゾーニング」とは…施設内で陽性者を隔離
東京都内の高齢者を対象とした施設で、新型コロナウイルスのクラスター(感染集団)が発生するなどの事例が相次いでいる。利用者の食事や入浴の介助などの際に職員と利用者の距離が近くなるため、感染予防が難しいことが理由の一つだ。高齢者は重症化のリスクが高いことから、自治体は対応に乗り出している。
板橋区では11月16日から、区内の高齢者介護施設3か所でクラスターが発生。
今月14日までに計59人の感染が明らかになった。
区は今月25日、公益社団法人「都看護協会」から、アドバイザーとして感染管理認定看護師の派遣を受け、区内の入所型の高齢者施設の運営事業者を対象に、新型コロナの感染予防策を学ぶ研修会を行う。
感染管理認定看護師は豊富な実務経験と感染症予防のための専門知識を持っていると認められ、日本看護協会の審査に合格した看護師。研修会では、施設の消毒方法などの感染予防策の他に、事業者が持ち寄った施設の図面を基に、アドバイザーが施設内で陽性者を隔離する「ゾーニング」の手法を伝える。
ゾーニングは感染の可能性がある人の範囲を決め、危険区域と安全区域を分ける感染症対策の一つで、入所型の施設でクラスターが発生した時に欠かせない対策とされる。事業者が作った施設の感染症対策のマニュアルに対して助言もする予定だ。
練馬区では7月以降、約10か所の高齢者施設で感染者が出ている。
高齢者を対象とした福祉施設は、重症化リスクが高い人たちが集まる点が病院と共通する一方、感染症を防ぐための知識や経験が乏しい。そのため区は9月から、区内40か所の特別養護老人ホームなどに、区のアドバイザーを務める東京医療保健大の菅原えりさ教授(感染制御学)ら7人の専門家を派遣している。
介護職員はのどに細い管を入れる「喀痰(かくたん)吸引」や歯磨き、おむつ交換など、唾液や排せつ物に触れる可能性がある業務も行うが、菅原教授は十分な対策ができていない場合もあると指摘。作業時は手袋、エプロン、マスクだけでなく、ゴーグルなどで目も守ることを呼びかけたうえで、「皆さんの行動一つ一つが高齢者の命を助けることにつながる」と訴えている。
世田谷区は10月から、区内の介護職員らを対象にした一斉PCR検査に取り組んでいる。今月20日までに100施設以上、延べ4364人の検査を行い、54人の陽性を確認した。
11月中旬には、同区鎌田の特別養護老人ホームで、職員と利用者計15人の感染が判明。初めてクラスターを発見した。全員が無症状で、保坂展人区長は「(感染がさらに)爆発する直前だったかもしれない」と意義を強調する。
一方で、区は対象者約2万3000人の検査費用として約4億円を見込んでいたものの、希望者は3割程度にとどまった。結果的に検査枠に余裕が生まれたため、区は今後、2か月に1回程度の検査を行う方針だ。
区幹部は「陽性が確認された人は仕事を休まざるを得ず、職員が感染した場合は施設の休業につながることもあるため、受検率を上げるのがなかなか難しい」と打ち明ける。
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