地元の味覚が楽しめる“役所メシの旅” ── 「蒸し鶏と練馬大根サラダ」

 「社員食堂」がある会社のように、市役所や区役所といったお役所にも食堂がある。うどん・そばやカレーといった定番メニューに加えて、地元の食材や名物グルメが味わえる食堂も。そんな地元の味が楽しめる役所の食堂を探訪する当連載企画。第6回は、東京都練馬区役所地下の職員レストランで、ご当地食材の練馬大根を使ったメニューを味わってきた。


 目の前に出てきたお皿には、こんもりと白いダイコンとニンジン、カイワレが盛られていた。今日のお目当てメニュー、「蒸し鶏と練馬大根サラダ」である。値段は520円。

 練馬区によると、練馬大根は、1600年代後半からこの地で栽培されはじめたという。首と尻の部分が細く、真ん中が太い形状をしており、畑から引き抜くために必要な力は、青果店でよく見る青首系の大根よりも3倍から5倍は必要だとか。

 水分が少なく乾きやすいため、たくあんに適しているという練馬大根だが、この日は、サラダとして味わう。練馬大根を食するのは初の機会、一体どのような味なのだろうか。箸で大根をひとつまみして、たれにつけずに生で口に含む。

 シャキシャキというさわやかな食感を楽しんでいると、ほのかな辛みを感じる。いかにも大根らしい味わいだ。次に、たれにつけた蒸し鶏と一緒に食べてみると、蒸し鶏の肉の旨みとタレの甘み、それに練馬大根の辛みの味わいがバランス良く口内で溶け合う。
  
 次から次へとメインディッシュに手を伸ばしたのち、少し充実感をおぼえたので、味噌汁に手をつけると、碗のなかから白い食材が現れた。これまた細く切られた練馬大根である。口の中に入れると歯ごたえがあり、生で食べたときと同じ辛さがほんのりとだが残っていた。
幻の練馬大根を季節限定メニューに

 この「蒸し鶏と練馬大根サラダ」は、取材に訪れた11月15日の40食限定メニューだった。前の日の14日は「練馬大根おろしチキンカツ丼」、16日は「カレイ唐揚げと練馬大根おろしポン酢」、17日は「豚角煮と練馬大根煮」、18日は「ブリと練馬大根煮」が限定メニューとして登場。また、14〜18日には「練馬大根と鶏肉のあんかけうどん・そば」が限定メニューとして提供された。

 つまり、練馬大根を使ったメニューが用意されたのは、この5日間だけ。練馬大根メニューを紹介する区のプレスリリースにも「幻の練馬大根」という文言が用いられている通り、名前こそ有名な練馬大根だが、いまや区民にとってもまれな食材となってしまっている。

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