第四回定例会で前川区長が所信を表明しました
はじめに
所信表明の様子
令和4年第四回練馬区議会定例会の開会にあたり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思います。
本年、国内では、年明け早々に新型コロナウイルス感染症の第6波、7月上旬には第7波に見舞われました。インフルエンザとの同時流行が予測されているなかで、現在、コロナの感染者は全国的に増加傾向となっており、東京では感染が再拡大しています。
そうしたなかにあっても、区は一貫して、コロナ以前の区政運営を取り戻す努力を続けてきました。中止を余儀なくされていた、照姫まつり、こどもアートアドベンチャー、防災フェスタ、練馬薪能、練馬まつりなどを順次再開し、来春には、練馬こぶしハーフマラソンの4年ぶりの実施も予定しています。練馬まつりには5万2,000人もの来場者があり、区民の皆様の再開を望む思いを実感しました。中学生の修学旅行や今年度から開始したイングリッシュキャンプは既に終了しました。小学生の移動教室は年内に完了する予定です。乳幼児の健診や健康相談を、日時指定や予約制の導入により順次再開するとともに、まちづくり事業では、対面による住民説明会や個別相談会を実施しています。今後とも、感染状況などを見極めながら、区政を運営していきます。
新型コロナウイルス感染症対策
次に、新型コロナウイルス感染症対策について申し上げます。
コロナ対策の転換
国は、7月に基本的対処方針の改定によりコロナ対策を転換し、新たな行動制限を行うことなく社会経済活動を出来る限り維持することを基本に、コロナと併存しつつ、平時への移行を慎重に進めて行くこととしました。感染者の全数届出見直し、療養期間の短縮、無症状感染者等の必要最低限の外出容認、入国制限の見直しによる水際対策の大幅緩和、ワクチン接種間隔の短縮などを相次いで実行しました。
都は国の動向を受け、発生届出の対象外となる感染者を対象とする陽性者登録センターを設置するなど、広域自治体としての対応を強化しています。
こうしたコロナ対策の転換に伴い、区では、高齢者や重症化リスクの高い方に、よりきめ細やかに対応することが可能となりました。一方で、広域行政を補完していた自宅療養支援物資配送は都に一元化し、酸素・医療提供ステーションを閉所しました。
区内ではこれまでに156人の方がお亡くなりになり、全数届出見直し後、区内医療機関から報告される陽性者は、先月下旬から増加傾向にあります。お亡くなりになった方に深く哀悼の意を表するとともに、現在も療養されている皆様の一日も早い回復を祈念申し上げます。
区民の皆様には、密閉・密集・密接の回避、場面に応じたマスクの着用、手洗い・換気をはじめとした基本的な感染防止策の徹底、積極的なワクチン接種、発熱した時のための抗原検査キット等医薬品の備えをお願いします。
ワクチン接種
区は9月9日から、従来株ワクチンによる5歳から11歳までの小児に対する3回目接種、26日から、2回目までの接種を終えた12歳以上の方を対象とするオミクロン株対応ワクチンの接種を開始しました。いずれも、診療所における個別接種と、区立施設等で行う集団接種による「練馬区モデル」により実施しています。先月27日からは、生後6か月から4歳までの乳幼児の接種を病院及び診療所で行っています。
コロナ禍における区民・事業者の支援
区独自に、先月開始した、国の臨時特別給付金の支給対象とならない生活困窮世帯に対する生活支援臨時給付金は、これまでに約400件支給しました。現在、真に生活に困窮する区民への更なる支援として、低所得の子育て家庭に対して、区独自に子ども一人あたり10万円の支給を検討しています。先月17日から、物価上昇の影響を受ける事業者の資金繰りを支援するため、区独自の特別貸付を開始し、先月末までに61件、5億円の融資あっせん申込を受け付けました。
また、国の電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金は、これまでに約4万1,000件支給しています。
子ども施策
不登校実態調査
昨年度から実施してきた不登校実態調査の結果を取りまとめました。
不登校を経験した中学校卒業者とその保護者、区立小中学校教員、フリースクールを対象に、アンケート、インタビューによる調査を実施しました。不登校の実態を体系的にまとめた、全国でも例を見ない調査です。
その結果、不登校の開始時期、きっかけ、不登校当時の悩み、必要としていた手助け、利用した支援とその評価、卒業後の状況などを把握することが出来ました。調査結果を踏まえ、不登校対策方針の見直しに直ちに着手します。
ヤングケアラー実態調査
本年6月から7月にかけて実施したヤングケアラー実態調査では、小学6年生で1.6パーセント、中学2年生で1.5パーセントの児童・生徒がヤングケアラーの可能性が高いことが明らかになりました。また、子どもが自らSOSを発しづらいこと、教員が家庭の問題にアプローチすることに難しさを感じていること、民生・児童委員の日常活動での把握には限界があること、などが浮き彫りになりました。
既に、今回把握できた対象者への支援に努めていますが、調査結果を踏まえ、新たに作成するチェックシートなどを活用して、早期の把握に努めるとともに、各分野が連携した相談支援体制を整えます。
高齢者施策
来年4月に「中村かしわ地域包括支援センター」「やすらぎシティ地域包括支援センター」の2か所を開設します。団塊世代の全てが後期高齢者となる、令和7年に向けて取り組んできた、27か所体制が整います。
今後も、医療や介護サービスなど、様々な相談について、より身近で利用しやすい窓口で支援できるよう区立施設等への移転を進めるとともに、高齢者人口の将来推計や地域の人口バランスを考慮して増設を検討します。
福祉施策
(仮称)高野台福祉園の開園
旧高野台運動場用地を活用して、来年1月、重度障害者の日中活動の場である「Leaves(リーブズ)練馬高野台」を開設します。定員は医療的ケアの必要な重症心身障害者5人を含む55人とし、新たに重症心身障害者を対象に、ニーズの高い入浴サービスを実施します。
これに伴い、区立石神井町福祉園を廃止し、跡地に重度障害者グループホーム、ショートステイ、24時間の相談支援施設の機能を備えた地域生活支援拠点を整備します。なお、本定例会に関係条例の改正案を提出しています。
障害者の意思疎通支援の充実
障害者の意思疎通支援を更に充実します。
先月から、区民事務所や福祉事務所、保健相談所など25か所の窓口で、遠隔手話通訳を開始しました。今後、はつらつセンターや子ども家庭支援センターなどにも拡大し、「いつでも」「どこでも」手話通訳を使える環境を整備していきます。
様々な障害特性に応じたコミュニケーションガイドブックを、庁内窓口、飲食店、小売店などで活用出来るようにするため、障害者・事業者との協働により作成しています。年明けから配布を開始するとともに、区民・事業者向けの研修を実施します。
来年1月、心身障害者福祉センターに「障害者ICT相談窓口」を開設します。イラスト・文字で会話を補助するアプリ、音声で文字を読み上げるアプリ、パソコンを視線の動きで操作できる機器など、障害者の意思疎通を助けるツールの相談・体験や貸出、操作方法のサポートを行います。
まちづくり
石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業
石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業は、都知事の認可を得て、先月15日に事業施行者となる組合が設立されました。今後、組合は関係権利者と調整し、権利変換計画案を作成します。区は、石神井庁舎から移転する機能の施設配置及び整備について組合と協議を進めるとともに、引き続き、事業の円滑な実施を支援していきます。
再開発事業区域から富士街道までの都市計画道路補助232号線は、先月7日に事業認可を取得しました。関係権利者への丁寧な説明と理解のもと整備に取り組み、再開発事業の実施とあわせて、交通環境の向上と魅力ある駅前空間の創出を進めていきます。
マンション管理計画認定制度の導入
築40年を超える分譲マンションが急増するなかで、定期的な修繕や日常の管理が十分に行われていないマンションへの対策が急務となっています。
本年4月、マンションの管理の適正化の推進に関する法律が改正・施行され、適切に管理しているマンションを公的に認定する制度が創設されました。区は、「練馬区マンション管理適正化推進計画」を年度内に策定し、来年4月から、管理計画認定を開始します。本制度により認定されると、市場における評価を得て、既存ストックの活用・流通促進が期待できます。
(仮称)取組強化プランの策定
次に、(仮称)取組強化プランの策定についてです。日本は世界の先頭を切って少子高齢化が進み、経済が停滞するなかでコロナ禍とロシアによるウクライナ侵略の直撃を受けました。円安の進行により、今後更なる物価上昇が懸念されています。国と地方を合わせた債務残高はGDPの2倍を超える世界に類を見ない状況です。財源の裏付けのない歳出拡大が続くことに、永く行政に携わってきた者として強い危惧の念を覚えています。
こうした状況にあっても、区はこれまでの政策を継続・発展させ、グランドデザイン構想でお示しした将来像を実現すべく努力しなければなりません。実現に向けた政策展開は、来年度策定する「(仮称)第三次みどりの風吹くまちビジョン」で明らかにします。これに先立ち今年度は、「区民協働」「DX」「人事・人材育成」の3つの柱による「(仮称)取組強化プラン」を策定し、政策を実現する具体的な仕組みや態勢の強化に取り組みます。
来月素案を公表し、区議会並びに区民の皆様のご意見を頂いたうえで、年度内に成案とします。
おわりに
先月、イギリスに赴き、ワーナーブラザース・スタジオツアーロンドンを視察しました。一流職人の手による、精緻な映画美術の空間が広がり、リアルな迫力に圧倒されました。ハリー・ポッターの世界が見事に表現されていました。
ワーナーブラザースが、ロンドンに続く2か所目を練馬区に決定したのは、様々な候補地が挙がったなかで、旧豊島園の豊かなみどりがハリー・ポッターの世界観と一致していたことが最大の理由だったそうです。
また、スタジオツアーロンドンが立地する自治体の幹部から、雇用など地域経済や地域コミュニティの活性化に大きく貢献していると伺い、事業者と地元の良好なコミュニケーションと協力が重要だと痛感しました。
区政を取り巻く状況の先行きは極めて不透明ですが、練馬区は今、更に発展する好機を迎えています。来春には名誉区民、牧野富太郎博士のNHK朝ドラ「らんまん」がスタートします。5月1日には「都立練馬城址公園」が一部開園し、年半ばにはハリー・ポッター スタジオツアー東京が開業します。そして秋には全国都市農業フェスティバルを開催します。
政策面で見ても、順天堂練馬病院の三次救急医療機関への指定が年度内に実現します。また、都立練馬児童相談所の整備、都営大江戸線の延伸、西武新宿線の高架化、美術館の再整備など、大きなプロジェクトが目白押しです。
区長就任以来、全国の自治体を先導する理想の自治体行政を目指して、政策と区政運営の両面にわたり様々な施策を実現してきました。これを更に前に進める、その根幹となるのは区民協働です。
こどもの森の運営、街かどケアカフェ、みどりを守り育てるムーブメントなど、多くの新しい取組みを進めてきました。毎日のように地域に出かけ、区民の皆様とひざ詰めで話し合いを行ってきました。この2年間、コロナ禍によってままならない状態が続きましたが、ようやく7月から「未来を語る会」を本格的に再開しました。区民一人一人の生活に根差した生の声に耳を傾け、意見交換を重ねることの大切さを改めて実感しています。
お約束した「改革ねりま第Ⅲ章」の実現に向け、区議会の皆様、区民の皆様と力を合わせて全力を尽くしたい、そう決意しています。ご理解、ご支援を心からお願い申し上げます。
なお、本定例会には、これまで述べたものを含め24件の議案を提出しております。また現在、区独自の物価上昇への対応、コロナ対策など、今年度3度目となる補正予算の編成を進めています。本定例会に追加して提案したいと考えていますので、併せてご審議のほど、よろしくお願いいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
コメント ( 0 )
トラックバックは利用できません。
この記事へのコメントはありません。