ビッグイシュー発「夜のパン屋さん」が企画する昼のイベント「夜パンB&Bカフェ」

今回は9月9日(土)に行われた「夜パンB&Bカフェ」というイベントを取材しました。このイベントは、ホームレス状態の人に雑誌販売の仕事を提供し自立を支援する「ビッグイシュー」が2020年から行っているプロジェクト「夜のパン屋さん」のスタッフが、ミニクーパーで知られる自動車メーカー「MINI」の応援を受けて、昨年11月に開始した、カフェやバザーなどを行うイベントです。


生活困窮者の雇用支援を昼間の時間帯でも

「夜のパン屋さん」は2020年に「人権TODAY」で紹介したことがありました。街のパン屋さんから売れ残った商品を預かって夜に販売代理をすることで生活に困っている人に働く場を与える取り組みです。「夜パンB&Bカフェ」は、その「夜のパン屋さん」とビッグイシューのB、それにミニがソーシャルアクションを応援する取り組み「BIG LOVE ACTION」のBを組み合わせて命名されました。練馬区にある築150年の古民家をリフォームしたイベント会場「けやきの森の季楽堂」で毎月第2土曜日に開催され、今回で11回目になりました。

料理研究家でビッグイシュー基金共同代表の枝元なほみさんが監修する「エダモンカフェ」のほかに、「夜のパン屋さん」や雑誌「ビッグイシュー」の出張販売があり、花や野菜を売る店が出店しています。そのほかにマッサージスペースやワークショップがあったりと、文化祭のような雰囲気のイベントです。

プロジェクトリーダーの枝元なほみさんにイベントを始めたきっかけや目的を聞きました。

——なぜ「昼」に?

プロジェクトリーダー・料理研究家の枝元なほみさん
「シングルマザーで、お子さんを育てていらっしゃる方にお声をかけて『夜のパン屋さんで働いてくれませんか』ってやってたんですけども、お子さんがいらっしゃると夜の時間帯だと働くのが難しいんですね。もしここで、月に一回でもなにかイベントがやれたら、昼間の時間帯でできたら、夜のパン屋さんと同じぐらいの仕事が作れるんじゃないかというのが思いつきでもあったんです。夜のパン屋さんの人たちも含めて、いろんな人がいろんな形の働き方ができるような取り組みの一つとして、こういうカフェができたらいいねって思っていたんです」

——今回はパンを売るだけではないんですね?

枝元なほみさん
「生活に困られている方の自立支援という『ビッグイシュー』の理念があったんですけど、その中でもいろいろな思いがあったと思うんですね。困っているといっても困り方も人それぞれだと思いますし、困っている人も困っていない人も、混ざりあったらいいなと思ったんですよ。経済的に困窮しているというだけじゃなくて、楽しい時間をとか、助けたいとか、みんながまざりあう場所があればいいなと思って。まずこの場所に来てホッとできる、お互いどうしが『いい天気ですね』とか話しあえる、ゆるい気持ちになれるところがいいなあと思っているんです」

会場内で営業するカフェには美味しいランチやケーキ、飲み物などがありますが、お金の余裕がない人のために「お福分け券」という、カフェに来た人が「次に来る誰か」のためにランチ代などを先払いする仕組みがあったり、余っている食べ物を持ち寄って、集まったものは誰でも持ち帰れる「フードドライブ」という取り組みが行われています。会場の前が、広い庭だったり、子供が遊べる「キッズスペース」もあるので、お子さん連れのお客さんも目立っていました。

「夜パンB&Bカフェ」で働く人の声

ここでは約20人、有給のスタッフが働いていますが、様々な形でスタッフとして関わっているそうです。中には「ビッグイシュー」の販売や、夜のパン屋さんで働いてる方もいらしたので、当日のスタッフの方2名に、このイベントの印象を聞きました。

——なぜ参加されたのでしょうか?

スタッフ
「普段は『夜のパン屋さん』で働いています。新しいプロジェクトを立ち上げるので人が足りないということで、なにか手伝えればいいなと思って参加しました」

——「夜のパン屋さん」との違いは?

スタッフ
「『夜のパン屋さん』はパンを食べに来る人とか、通勤とかの帰りで買ってくれる人みたいな感じで、その場にとどまることはないんですが、カフェは人が集まる場みたいな所を提供しているので、なにかしら必要にされてると感じるのはあるので、やりがいは感じますね」

——参加して、いかがでしたか?

スタッフ
「きっかけは『夜パン』のスタッフに誘われてカフェをやるので手伝ってくれますか、みたいな感じで。今はやってませんが『ビッグイシュー』の販売員もやっていました。『ビッグイシュー』は、私は人間観察が好きだから、人の流れを見ながら働くのが好きだったんですけど、カフェはいろんな地域からいろんな人が来るので、カフェがなければ、いろんな人に出会えなかったのでそれはよかったと思います」

普段は販売作業で忙しい「夜のパン屋さん」のスタッフとも、このイベントではゆっくり話ができます。出店している人たちと、フリーマーケットのように気軽に対話できました。イベントには毎回100人から200人のお客さんが来場し、多いときには約300人が来たこともあったそうです。

来場者の反応は

今回、会場に来ていたお客さんにも話を聞きました。

お客さん
「いままで4回ぐらい来ました。ケーキのセットが美味しいので。パン屋さんは良い取り組みだと思って、いろんな物を無駄にしないでちゃんと消費するというのは。さっきも同じテーブルで隣になった人とちょっと話したりとか、刺激にはなります」

お客さん
「練馬でフードバンクをやっているんですよ。パン屋さんも知っていたし、ビッグイシューもよく買っていたので、1回来てみたいなと思って。いろんな人が気軽に来れる感じがいいかなと」

ミニクーパーのオーナーで、企業のサイトから告知を見て来たという人や、近所に住んでいて、会場の古民家を見学する目的で来られた方などイベントにはいろいろな方が来場していました。会場「けやきの森の季楽堂」がある場所は、ここが東京23区かと思うような、大きな木に囲まれた広い空間なので、足を運んでみるだけでも面白いと思います。

課題は、自動車メーカー「MINI」のサポートが年内で終了することで、イベントは12月を最後にいったん終了することが決まっています。ただ、プロジェクトリーダーの枝元さんは、クラウドファンディングなどで資金を集めて、来年以降も続けていく方法を検討しているそうです。あと3回の開催が確定しており、次回は10月14日に行われます。興味のある方はぜひ、訪れてみてください。以下のサイトに日時や場所などの情報が掲載されています。

(TBSラジオ「人権TODAY」担当:藤木TDC)

引用元:BIGLOBEニュース

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