【映画祭】「朝鮮半島と私たち」 日芸の学生が映画祭 渋谷・ユーロスペースで来月開催
戦前からの朝鮮半島の歴史や在日コリアンとの関係に焦点を当てた映画祭「朝鮮半島と私たち」が12月8~14日、東京都渋谷区の劇場「ユーロスペース」で開かれる。日本大芸術学部(練馬区)の学生たちが「朝鮮半島のニュースが続いていても、どこか人ごとだった。日本との間の問題を身近なものとして考え直したい」と企画した。
(辻渕智之)
映画祭は、同学部映画学科の古賀太(ふとし)教授(映画史)のゼミで学ぶ三年生が毎年開催しており、八回目の今回は十三人が参加。テーマ設定や作品選びのほか、映画配給会社と自ら交渉し、会場運営も担う。古賀教授は「社会性、時事性がありながらも映画のプロが手を出さないようなテーマに挑戦してきた」と自負する。
今回のテーマを提案したのはリーダーの金子絹和子(きわこ)さん(21)だ。吉永小百合さん主演の映画「キューポラのある街」(一九六二年)を見て、かつて在日コリアンら九万人余が北朝鮮に渡った帰国事業を知った。「無知だった私は衝撃を受けた」。同時に、日本の植民地支配や在日の歴史に向き合おうとしない日本社会の現状にも危機感を抱いた。
映画祭では十八本を上映する。キャッチコピーは「知らないだけではいられない」。今年前半は南北朝鮮、米朝の首脳会談で朝鮮半島危機が緩和されたかに見えたが、最近は植民地時代の元徴用工への賠償判決が日韓関係に影を落とす。チラシでは「過去は捨てても、どこまでも追ってくる。この歴史の延長線上で私たちは生きている」と強調した。福島瑞木(みずき)さん(22)は「戦前から最近の映画までさまざまなテーマ、視点のものをバランスよく集めた」とPRする。
上映作のうち五本は、日本統治下の朝鮮で撮影された貴重なフィルムだ。韓国映像資料院が近年デジタル復元した「授業料」(四〇年)と短編二本は、韓国人留学生の金潤雅(キムユナ)さん(24)が交渉し、借り受けた。
神奈川県茅ケ崎市に住む在日二世の朴寿南(パクスナム)監督の「沈黙-立ち上がる慰安婦」(二〇一七年)は旧日本軍慰安婦だった韓国人女性らの闘いを描く。保坂和哉さん(21)は「心を打つ作品。日本政府は解決済みの問題と言うが、おばあさんたちの思いを知り、話し合いの場を設けることは大切だと思った」と話す。
上映日程やチケット購入の問い合わせはユーロスペースへ。公式サイト「日芸映画祭『朝鮮半島と私たち』」()でも確認できる。
◆「朝鮮半島と私たち」の上映作(かっこ内は公開年)
「有りがたうさん」(1936年)
「銃後の朝鮮」(37年)
「京城」(40年)
「ともだち」(40年)
「授業料」(40年)
「朝鮮の愛國日」(40年)
「にあんちゃん」(59年)
「キューポラのある街」(62年)
「絞死刑」(68年)
「伽〓子のために」(84年)
「戦後在日五〇年史[在日]歴史篇」(97年)
「GO」(2001年)
「KT」(02年)
「血と骨」(04年)
「パッチギ!」(05年)
「かぞくのくに」(12年)
「空と風と星の詩人~尹東柱の生涯~」(16年)
「沈黙-立ち上がる慰安婦」(17年)
※〓は、にんべんに耶
2018年11月24日 夕刊
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