としまえん閉園リークの裏に見える「西武線コンテンツパーク計画」の思惑
「としまえん」の閉園報道は、西武グループの正式発表ではなく、いわゆるリーク。では誰が、どんな思惑でリークしたのか。それを考えるには近年、西武線沿線にテーマパーク計画が続々誕生している事実に目を向ける必要がある。そして、その先には「訪日外国人需要」を取り込みたい西武グループの思惑が見えてくる。
(ノンフィクションライター 窪田順生)
「としまえん」閉園報道
リークした者の思惑はどこに?
「としまえん」が段階的に閉園して、その跡地の一部をワーナー・ブラザースが「ハリー・ポッター」のテーマパークとして2023年春に開業する、なんて計画をマスコミがそろって報道した。
ただ、「としまえん」の運営元である西武グループは「肯定も否定もできない」「現状では何もお答えすることができません」などと回答している。要は、内部事情に明るい「関係者」がリークしたもので、正式決定した計画ではないのだ。
この手の水面下で進むプロジェクトをマスコミにタレ込む者の狙いは2つしかない。ひとつは、プロジェクトを潰すため。そしてもうひとつは、何かしらの交渉が遅々として進まないので、報道を利用して既成事実化させるためだ。今回の場合、世論の反応からも前者は考えにくいので、後者である可能性が高い。
というのも、実は、もともと「としまえん閉園」は10年前から決まっていて「交渉中」の案件だからだ。あの一帯は、東京都が「練馬城址公園」という都市計画公園として2020年までに事業認可を目指す優勢整備区域に認定されており現在、都と西武グループが交渉のまっただ中なのだ。
役所と仕事をした方ならばわかると思うが、役人主導のプロジェクトは遅々として進まないケースが多い。ボスが選挙でコロコロ変わることに加えて、議会対策や支持率のためという理由で、政策がすぐに“塩漬け”になるからだ。事実、「練馬城址公園」自体も1957年に指定を受けたが半世紀も凍結。東日本大震災を受けて、慌てて防災拠点が必要だという話になってゾンビにようによみがえった経緯がある。
こういう役所の「仕事の遅さ」を踏まえると、今回の「ハリポタ」リーク報道は、キビキビ動かない都の対応にしびれを切らせた何者かが、交渉を加速させるため、あるいは跡地の活用方針を巡る交渉で主導権を握るために仕掛けた可能性も高いのではないか。
実際、ネットやSNSでは「としまえん閉園」を惜しむ声が上がる一方で、跡地に何ができるのかという期待も膨らんでいる。そんな中で、もし都が「周辺住民が避難できるだだっ広い自然公園にするだけですよ」と水を差すようなことを言い出したらどうか。
「え〜、ハリポタ来んじゃないの?ガッカリ」「公園だけじゃ周辺地域が盛り上がらないだろ」なんて文句を言う人も多いはずだ。これにマスコミが飛びつけば、今年7月の都知事選の「争点」になる。もしそれで、“ハリポタパーク”を「公約」に掲げた候補者が当選なんてことになれば、都議会や練馬区議会の反対派を容易にねじ伏せられ、トントン拍子で話が進む。
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