令和2年 第三回定例会 区長所信表明
はじめに
前川区長所信表明の様子
令和2年第三回練馬区議会定例会の開会に当たり、区政運営に対する所信の一端を申し述べ、区議会並びに区民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思います。
はじめに、令和2年7月豪雨、先日の台風10号により、犠牲となられた方々に哀悼の意を表しますとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
次に、新型コロナウイルス感染症について申し上げます。昨日までに、区内の感染者は863人にのぼり、32人の方がお亡くなりになっています。改めて、深く哀悼の意を表し、現在も療養されている皆様の一日も早い回復を祈念申し上げます。
5月25日に東京都の緊急事態宣言が解除され、一旦は収束に向かうかに見えましたが、経済活動との両立を目指すなかで、6月下旬以降、感染が再び拡大し、都内では8月1日に過去最多の472人が確認されました。現時点では、新規陽性者数は減少傾向にあるものの、その速度は緩やかであり、再増加への警戒が必要となっています。また、医療機関の負担が長期化しており、今後の重症患者数の推移に警戒が必要な状況にあります。
今回の第2波を乗り切る緊急対応が喫緊の課題となっていますが、事態が長期化することも覚悟して取り組まなければなりません。先月28日、国は「新型コロナウイルス感染症に関する今後の取組」を決定しましたが、その内容は当面の指針や目標を示すにとどまっています。現場への影響は、今後の具体化を待たなければ見通すことが出来ません。国には、更に歩を進めて、情報公開の徹底、当面と長期にわたる基本計画の策定、都道府県には、広域的な視点に立った、実効性のある具体的対応が求められています。
事態は日々刻々と変化しています。基礎的自治体である区は、区民、現場の声を受け止め、実態に合わせて、必要な事業を重点的・機動的に実施していきます。国や都と連携し、引き続き、新型コロナウイルス感染症から区民の命と健康を守り、生活を支えるため、全力で取り組む考えです。
新型コロナウイルス感染症について
専決処分・補正予算案
今後、厳しい財政状況が見込まれるなか、限りある財源は、困窮する区民・事業者の支援をはじめ、真に必要な使途に充てるべきものと考えています。
8月18日、感染の拡大を踏まえ、区におけるPCR検査体制の充実強化、感染患者を受け入れている病院に対する経営支援、あわせて8億527万円となる補正予算を専決処分しました。機を逸せず取り組むべきであることから、専決処分による対応を行ったものです。区議会の皆様のご承認をお願い申し上げます。
これに続き、本定例会には、補正予算案を提案しています。感染拡大防止と医療提供体制の充実、区民・事業者への支援、区民生活に不可欠な社会インフラの維持、景気対策工事・物品購入など緊急に取り組むべき対策を取りまとめ編成しました。
感染拡大の防止と医療提供体制の充実
次に、専決処分による補正予算及び提案している補正予算案に計上した事業を中心に、区の取組みについて申し上げます。
第一に、感染拡大の防止と医療提供体制の充実についてです。感染拡大防止のため、感染者を早期に発見し、適切な療養に繋げるとともに、感染者への医療提供体制を充実します。
1 保健所体制の強化
感染症対策の中心である保健所では、電話相談や受診案内、陽性者への聞き取りや、入院・ホテル療養の調整・移送、濃厚接触者の検査と健康観察、検体採取・搬送など多岐にわたる業務に追われています。
今回の第2波では、若者の感染者が多く、行動範囲の広さや協力に消極的な方の存在などにより、調査に時間がかかるようになっています。職員は、土日も含めて夜間までの勤務を余儀なくされてきました。
保健所の感染症対策は20人体制で運営してきましたが、増加する業務に対応するため、保健師の兼務発令、人材派遣の活用、業務の仕分けによる事務職対応の導入などにより、現在は64人体制としています。保健所の体制強化は大きな課題であり、感染状況などを見極めながら、業務に支障が生じることがないよう、力を尽くしていきます。
一方で、会食や家庭内での感染が広がっている現在では、積極的な検査による早期発見に集中する段階にあると考えています。疫学調査の見直しを含めた国への働きかけも視野に、各区保健所や東京都と協議を進めてまいります。
2 PCR検査体制の構築
PCR検査が必要と判断された区民が、身近な場所で速やかに検査が受けられる体制を構築します。
7月から、全国の自治体に先駆けて、練馬区医師会協力のもと、診療所における唾液PCR検査を開始し、8月末時点で112か所の診療所で、累計2,366人の実績をあげています。また、区コールセンター等の紹介枠等を設定した医療機関に対し、実績に応じて支援を行うことにしました。6月末まで光が丘第七小学校跡施設に臨時開設していたPCR検査検体採取センターでは、762人の検査に対応しました。更なる感染拡大やインフルエンザの流行に備えるため、石神井公園駅付近の高架下に、今月26日、センターを新たに開設します。
高齢者や障害者の入所施設でのクラスターを防ぐため、新規入所者のPCR検査費用を助成します。
3 感染者の療養支援
感染者で、軽症や無症状の方が自宅療養を行うケースが増えています。食品を中心とした生活必需品や血中の酸素飽和度測定器などをお届けし、療養を支援します。
4 医療提供体制の充実
感染患者の入院、帰国者・接触者外来の設置により経営が悪化している病院に対する支援が、国や都の措置では不足しており、区独自の支援を行います。これまでの減収相当額を補助するだけでなく、今後の患者受入れについても実績に応じて支援します。日々、感染リスクに晒されながら最前線で奮闘している医療従事者の皆様に、更なる感謝の気持ちを表す応援アートの準備を進めています。
区民・事業者への支援
第二に、区民・事業者への支援についてです。最も苦しむのは、収入の道を断たれた区民や事業者の皆さんです。影響の長期化を見据え、生活再建支援や、子育て支援、事業者の事業継続の下支えを行います。
1 生活困窮者への支援
住居確保給付金の予算を増額し、申請の増加に対応します。利用者の約75パーセントは、給付金だけでは家賃を賄いきれていません。このため、区独自に生活再建支援給付金を支給します。また、今後生活保護申請の増加が見込まれることから、予算を増額します。
2 子育てへの支援
子育てのひろばや児童館は、定員、遊び方などで、密を避ける工夫をし、6月1日から再開しました。練馬こどもカフェは、貸し切りが可能なホテルカデンツァ光が丘とカフェココでは、新規開始にこぎつけましたが、それ以外の3店舗では、再開が困難なため、今月からオンライン版を試行します。保健相談所では、6月から乳幼児健診を、8月から母親学級など健康教育を、順次再開しています。
子ども家庭支援センターでは、自宅で過ごすことが多い保護者が、子育ての悩みを抱え込まないよう、オンラインによる子育てのひろばを実施しています。支援が必要な家庭に対しては、登園自粛期間中も保育所等への登園を促すなど、育児負担の軽減や見守りに取り組んでいます。
今年度出生した新生児のいる家庭に対して、健診での移動時の感染を避けるためタクシー利用にも使える、「こども商品券」2万円分を区独自に配付します。
3 中小企業・商店街への支援
事業者に対する緊急対策として、3月から開始した区独自の特別貸付は、上限額引き上げなどの拡充を行い、融資の受付は3,276件に上っています。利子補給金と信用保証料の予算を増額し、引き続き、資金繰りを支援します。
練馬区商店街連合会が実施するプレミアム付き商品券事業を支援します。過去最高のプレミアム率30パーセントの商品券販売に2倍を超える申し込みがあり、昨日から利用されています。
今月から、練馬ビジネスサポートセンターの中小企業診断士を増員します。チームとして、感染対策と事業活動の両立について事業者への出張相談を開始し、助言に基づく感染対策等の経費を補助します。
社会インフラの維持
第三に、社会インフラの維持についてです。保育、学校、介護・障害福祉サービスを維持していく体制を整えます。
1 保育環境の確保
保育所等は、緊急事態宣言期間中も登園自粛要請を行ったうえで、エッセンシャルワーカーの方々が業務を継続出来るよう、本区では一貫して原則開園としました。保育所等の事業継続の一助となるよう、従事者の皆様に区独自の特別奨励金を支給します。
2 教育環境の確保
2学期が始まりました。区立小中学校では、学習内容の重点化、ICT機器の活用、学習指導サポーターなどによる個々人に応じた指導の充実を進め、教育水準の確保に取り組んでいます。
新型コロナウイルス感染症への不安のなか、夏季休業が明けたこの時期、子どもたちの心のケアには、注意が必要です。教育委員会では、スクールカウンセラーなどによる学校の相談体制を強化するとともに、スクールソーシャルワーカーを必要に応じて家庭にも派遣し、きめ細やかな支援を行っています。
小中学校及び幼稚園の感染予防対策として、トイレの手洗いの自動水栓化のほか、各学校・園が実情に合わせて必要な物品を購入出来るようにします。また、私立幼稚園に感染症対策物品の購入費用を補助します。
3 高齢者・障害者へのサービスの確保
緊急事態宣言解除後、街かどケアカフェ、はつらつセンターなどの高齢者施設の全てを再開しました。いきがいデイサービスなどの介護予防事業も順次再開しており、利用者は徐々に増えています。
緊急事態宣言期間中も業務を継続した介護・障害者通所施設では、利用控えなどにより、利用率が一時落ち込んでいましたが、現在は緊急事態宣言以前と同様に回復しています。これらの施設職員を対象に、感染症対策オンライン研修を7月末に開始しました。
特別養護老人ホームなど高齢者や障害者の入所施設では、感染予防・発生時対応の強化が急務です。PCR検査費用の補助に加え、感染予防アドバイザーの派遣、クラスター発生時の法人枠を超えた職員相互派遣体制の構築を行います。
まちづくり
次に、まちづくりについてです。
災害に強い街、道路・鉄道、公園は、区民の日常生活、安全・安心な暮らしを支えるうえで欠くことの出来ない都市インフラです。
これらの整備は、長い年月を要するものであり、計画的に取り組みを進めていくことが必要です。
台風対策
昨年、台風15号、19号、引き続く大雨で様々な課題が浮き彫りになり、災害対策再点検のなかで対応策の検討を進めてきました。
保育所やごみ収集など施設・事業の継続可否、避難所開設の時期等を予め定めておく行政のタイムラインを5月に策定しました。台風接近4日前から情報収集、検討を始め、2日前に施設・事業の継続可否、避難所開設を決定します。7月には、全庁を挙げた訓練を行ったところであり、今後ともより実効性のあるものとしていきます。
地域の皆様と協働した防災を更に進めます。昨年度は、関町地区で「地域別防災マップ」を作成し、図上訓練やまち歩きなどのワークショップを通じて、地域特有の災害リスクを共有しました。今年度は、マップを活用して地域の皆様が適切な行動がとれるよう、訓練を実施します。加えて、先月から旭町地区でも「地域別防災マップ」の作成を始めています。
災害時の避難所や避難拠点における感染症対策が重要な課題となっています。マスク、消毒液、段ボール間仕切りなどの備蓄を増やします。消毒液は、常時一定量を確保するため、新たに貯蔵庫を2か所設置します。
治水対策
練馬区総合治水計画を改定し、東京都が実施する河川・下水道の整備と連携して、令和19年度までに、1時間あたり75ミリの降雨に対応できる流域対策を進めます。今月、素案を公表し、区議会並びに区民の皆様のご意見を頂いたうえで、年度内に成案とします。
防災まちづくり
貫井・富士見台地区で、震災時に建物の倒壊や延焼被害の恐れのある密集住宅市街地の整備促進事業を実施しています。桜台地区での新たな密集事業への着手に向け、先月、まちづくり協議会を設置し、基本方針となる「重点地区まちづくり計画」の検討を始めました。令和3年度中の事業着手を目指します。
これらの地区に次いで、危険性が懸念される田柄、富士見台駅南側、下石神井の3地区を、区独自の「防災まちづくり推進地区」に指定しました。老朽家屋の除却、狭あい道路の拡幅、危険なブロック塀等の撤去などに集中的に取り組みます。7月には、地区の指定と取組内容を周知するため、オープンハウスによる説明会を開催しました。今後とも、地域の皆様と防災上の課題を共有し、災害に強いまちづくりを進めていきます。
都市インフラ整備とまちづくりの推進
次に、都市インフラ整備とまちづくりの推進についてです。
石神井公園駅南口西地区市街地再開発事業については、本年春に予定していた都市計画原案の説明会を、感染拡大により延期し、7月に実施しました。年内の都市計画決定を目指して手続きを進め、都市計画道路補助232号線の整備と合わせて、再開発事業の実施による安全で魅力あふれる街の実現に取り組んでいきます。
西武新宿線の連続立体交差事業については、昨年2月に側道及び駅前広場の計画と合わせて、都市計画素案説明会を開催しました。本年3月には、連続立体交差化、側道、駅前広場の都市計画案及び連続立体交差化の環境影響評価書案の説明会を予定していましたが、感染拡大のため延期しました。その後、まちづくりニュースの配布や権利者への個別訪問を行うなど、計画の周知に取り組んできました。現在、説明会の開催に向けて準備を進めています。沿線各駅周辺のまちづくりについても、地域の皆様と協議を進めています。
また、都市計画道路補助230号線の青梅街道・新青梅街道区間の事業化に向け、年内には現況測量に着手する予定です。
大江戸線の延伸については、東京都と駅やトンネルの構造、車庫などの課題について具体的な協議を重ねています。7月に事業認可を得て、大泉学園町の新駅予定地付近で大泉学園通りの拡幅整備に着手したほか、大泉学園町地区をはじめとする沿線地域でも、地域の方々と共にまちづくりの検討を進めています。大江戸線の延伸は、練馬区が今後も発展し続けるために、必ず実現しなければならない事業であり、早期事業化を目指して、引き続き、都と協議を進めていきます。
練馬城址公園
先月末、遊園地「としまえん」が94年の歴史を閉じました。最終日の消灯式には、区内外から多くの人々が詰めかけ、別れを惜しみました。
先月18日には、ワーナーブラザースジャパン、西武鉄道などから、ハリーポッター・スタジオツアー施設のオープンが発表されています。練馬城址公園の段階的整備に合わせ、ロンドンに次いで世界で2番目となる施設の整備が正式に決定したことは、区として大いに歓迎したいと思っています。
7月に、区は都に対し、水とみどり、防災、にぎわいの機能を備えた公園の実現に向け、要請書を提出しています。区民にとって大切な場所であるこの地が、練馬区の新たな魅力となるよう、都をはじめ関係者と力を合わせていきます。
プラスチックごみ削減への対応強化
次に、プラスチックごみ削減への対応強化についてです。7月からレジ袋の有料化が始まりましたが、区では、庁舎売店と喫茶コーナーで1か月前倒しして実施しました。また、ペットボトル削減のため、区役所のアトリウムにマイボトル給水器を設置するなどの取組みも進めています。
区民の皆様には、「資源・ごみ分別アプリ」のお知らせ機能を活用して、啓発メッセージを発信しています。産業団体をはじめ各種団体には、区の取組みを紹介し、削減への協力を要請してきました。東京あおば農業協同組合とは、プラスチックごみ削減の具体化を協議しており、土に混ぜると、水と二酸化炭素に分解される農地用シートの活用などについて、検討を進めていきます。
感染拡大による区政への影響
新型コロナウイルス感染症の拡大は、区政に様々な影響を及ぼしています。
デジタル化の推進
コロナ禍において様々な問題が浮き彫りになりましたが、最も重要な課題はデジタル化の推進です。
区役所に来なくても様々な手続きや準備が出来るようにします。電子申請や申請書ダウンロードの拡大を更に進めるとともに、保育所の入園相談などの窓口は抜本的に改善します。保育所探しから入園申請、更には入園後に至るまで、全ての手続きを、オンラインで完結できる仕組みの構築に着手します。同時に、オンライン化を妨げている書面、対面、押印などの規制を見直します。
混雑による密を避けるため、現在行っているオンライン窓口混雑情報に、10月から保育所の入園相談、1月からはマイナンバーカード交付の予約機能を追加します。感染防止と利便性向上のために、非対面式のキャッシュレス収納を進めます。行政の仕事の在り方を改善するため、テレワーク環境の構築などを進めていきます。
区財政に対する感染症の影響
次に、区財政に対する感染症の影響です。
区財政の先行きは極めて厳しく、今後の区政に大きな影響をもたらすと思われます。内閣府が今月8日に発表した4月から6月までのGDPは、年率換算で28.1パーセント減少、戦後最大の落ち込みとなりました。今後の日本経済の前途を楽観視することは出来ません。
影響は既に区財政に及んでいます。財政調整交付金の当初算定額は昨年度を約90億円下回っています。来年度は財政調整交付金に加え、税収の大幅減が避けられず、かつて経験したことのない本格的な財政危機に見舞われることを覚悟しなければなりません。
しかも、感染症対策が求められるなかで、予算総額の5割以上が扶助費を始めとした義務的経費で占められており、区財政の自由度は極めて低いものとなっています。優先順位を見極め、必要な施策は時機を逸することなく確実に実行する一方で、聖域なく事業を見直し、歳出を削減しなければなりません。既に、美術館や図書館の構想、映像文化のまち構想は、策定時期を延期することとしましたが、他の事業についても必要性・緊急性を総点検し、アクションプラン・公共施設等総合管理計画事業の見直しを進めます。
この難局を乗り越え、持続可能な財政運営を堅持するため、区議会の皆様、区民の皆様とともに全力を尽くしていきたい。ご理解とご協力を重ねてお願い申し上げます。
なお、本定例会には、決算議案のほか、これまで述べたものを含め27件の議案を提出しております。宜しくご審議のほど、お願いいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
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