三遊亭王楽 父・好楽の七光りを消す!試練の7日間
【笠原然朗の舌先三寸】日本テレビ「笑点」大喜利メンバーの落語家、三遊亭好楽(74)の長男で落語家の三遊亭王楽(43)がデビュー20周年を迎え、6月7日から東京・池袋の東京芸術劇場シアターウエストで「芸歴20周年記念独演会7Days」を行う。
7日間8公演でゲストとして8人の大物落語家が登場(別掲)。いずれ当代きっての人気者ばかり。
各々の得意ネタをあえて当日の高座にかける王楽は「憧れの師匠たちとは違って私ならこうやります、というものを聞いていただきたい」と話した。
昔、プロレスでジャンボ鶴田の「試練の十番勝負」、ザ・デストロイヤーの「覆面十番」なるものがあった。子供の頃、胸をわくわくさせながらテレビ観戦したことを思い出す。プロレスとは違って、落語にピンフォールやギブアップなどによる勝ち負けはないが、王楽は高座というリングで大物相手に自らの“20年”を観客に問う。実力差がはっきりと表れる試練の「話芸八番勝負」なるだろう。
「準備には1年以上かけました」
というのはゲストのスケジュールを抑えるのに困難を極めたからだ。1年以上先まで決まっている人気者もおり「まず皆さんの空いている日を確認してから直接、お会いしてお願いしました」。
コロナ下で行われる落語界では久しぶりのビッグイベントだ。
「大銀座落語会」など世間の耳目を集める数々のイベントを仕掛け、落語界のトップランナーとして走り続けている春風亭小朝(66)は12日(土)の昼の部に登場する。
王楽は「前座の頃から噺を教えていだきました。小朝師あっての僕です」と話す。たぐいまれなるプロデュース能力を間近にみて、学んだ結果が今回のイベントにつながったのだろう。
小朝に対する王楽の私淑ぶりを示す例が、彼の息子たちのことだ。名前は、8歳の長男が「理史(さとし)」、5歳の次男が「康至(こうじ)」、いずれも小朝の命名だという。
「立派に職業について、世間の役に立つ人間になって欲しい、という思いでつけてくれました」。
王楽の本名は家入一夫。次男の名前は「家入康至」で「家と康で徳川家康。天下がとれる名前を、という意味もあるそうです」。
2人の息子たちは7日(月)の初日、高座デビューを果たす。ゲストは父・三遊亭好楽だから、親子三代の競演が実現する。落語界では林家正蔵(58)、三平(40)らの海老名家に次ぐロイヤルファミリーの誕生か?
改めてゲスト8人の顔ぶれを見てみよう。
現在、日本には落語家の団体は5つ。春風亭小朝、春風亭一之輔(43)が所属する落語協会、春風亭昇太(61)が会長を務める落語芸術協会、笑福亭鶴瓶(69)、桂文枝(77)の上方落語協会、立川談春(54)の立川流、三遊亭好楽、王楽の円楽一門会。ゲストはすべての団体から。
団体を超えてこれだけのメンバーをそろえることができるのは、王楽の実力と人柄によるところもあるが、好楽の威光を否定することはできない。
「今後、団体の枠を超えて落語家が集まるとき会長は師匠ですわ」と桂文枝が好楽に言ったという話もあるほど「誰からも愛され、敵を作らない」父・好楽は東西、団体関係なく信奉者は多い。
「親の七光りはある?」
王楽にぶつけてみた。
「七光りですか?だって好楽ですよ」と笑う。一方で「5年後の25周年イベントはゲストだのみではなく、1人でやらないとダメでしょうね」と遠くを見る目をした。
「ならば今回の7日間は、七光りを1日ひとつ消していくことになるかもしれませんね」とさらにぶつけると、「そういえば13日(日)に、ネタ出ししていませんが師匠・円楽(5代目)直伝の◯◯◯◯をやります」
「それって、好楽師匠が噺は覚えてはいるけど、思い入れが強すぎて、いまは高座にかけられない、と言っていたネタですよ」
1月、好楽にインタビューしたとき、出てきた話だ。好楽は言った。「10年後ならできるかも…」と。
その話をしたら王楽の目が一瞬、ギラリと光ったように感じた。
大勝負の高座で、“御曹司”大化する…そんな予感がする。
◆三遊亭王楽芸歴20周年記念独演会
(1)6月7日(月)午後6時半開演
演目「藪入り」
ゲスト・三遊亭好楽 (2)8日(火)午後6時半開演
演目「包丁」
ゲスト・立川談春
(3)9日(水)午後6時半開演
演目「らくだ」
ゲスト・笑福亭鶴瓶
(4)10日(木)午後6時半開演
演目「井戸の茶碗」
ゲスト・春風亭昇太
(5)11日(金)午後6時半開演
演目「帯久」
ゲスト・立川志の輔
(6)12日(土)午後1時半開演
演目「三枚起請」
ゲスト・春風亭小朝
(7)同日午後6時開演
演目「ねずみ穴」
ゲスト・春風亭一之輔
(8)13日(日)午後1時半
演目「読書の時間」(桂三枝・作)
ゲスト・桂文枝
チケットなど問い合わせは夢空間=(電)0570(06)6600。
◆三遊亭 王楽(さんゆうてい・おうらく)1977年、東京・練馬区生まれ。本名・家入一夫。駒澤大学英文科卒業。2001年、父・好楽と同じく5代目三遊亭円楽に入門。04年、二つ目昇進。09年真打昇進。古典落語のほか自作の新作落語も発表している。
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