ラーメン官僚が悶絶! 目黒の注目店『えーちゃん食堂』のスゴい“香り”のラーメンが旨いワケ


食楽web

 2023年4月24日、都内の大動脈のひとつである山手通り沿いに1軒のラーメン店が産声を上げました。それが今回ご紹介する『えーちゃん食堂』です。

 公共交通機関でお店へとアクセスしようとすれば、不動前(東急電鉄目黒線)が最寄り駅(徒歩5分程度)となりますが、JR目黒駅からでも徒歩10分ほどの場所です。しかも店舗は、目黒エリア屈指の人気を誇っていた『鶏そばきび 目黒店』の跡地。今期オープンした都内の新店の中でも、かなり立地条件が良好な部類です。




屋号に『食堂』の名を冠するだけあって、ファザードはノスタルジックかつ素朴

 そんな『えーちゃん食堂』を切り盛りするのは、佐藤栄市店主。佐藤店主は、以前(2021年6月)、食楽webの連載でも紹介した『中華そばえもと』(閉店)の店長を務めていた方。その後、巣鴨駅前の『まるえ中華そば』を経て、この度、晴れて一国一城の主として独立を果たした、経験豊かなラーメン職人です。

『えーちゃん食堂』の営業時間は、早朝7時半〜昼13時までとかなり変則的です。このため、本年4月に同店が営業を開始してからも足を運ぶことが叶いませんでしたが、根気強く機会をうかがい、この度、ようやく訪問することができた次第です。


席は、カウンターのみで6席

 訪問した日は、ランチタイムにはまだ早い朝の時間帯でありながら、店の外で5名もの待ち客が待機していました。私が列に身を投じた後もお客さんがひっきりなしに来訪する盛況ぶりに、『えーちゃん食堂』の人気の高さを実感。

 とはいえ、回転は比較的スムーズで、待つこと10分ほどで、カウンター席に空席が発生。扉をくぐれば、店内には大きな券売機が鎮座。券売機で所望の品の食券を購入した後、着席した次第です。

記憶に末長く刻まれる力強く繊細な「ラーメン」


「ラーメン」1000円。券売機の一列目は「ラーメン」「チャーシューメン」「メンマラーメン」などの汁そば系、二列目に「つけめん」や「ざるラーメン」のボタンが並びます

 基本メニューである「ラーメン」と「つけめん」の価格設定は1000円と比較的高額ですが、3桁価格の「かけラーメン(800円)」も提供。前述の通り、営業が7時半からと早いので、朝食としてラーメンをいただく場合、「かけラーメン」程度のボリュームが適度な塩梅だと感じる方もいらっしゃるでしょう。ちなみに価格はすべて2023年10月現在のものです。

「ラーメン」、「つけめん」、「ざるラーメン」のいずれもが、甲乙付けがたい完成度を誇りますが、初訪問時に召し上がってもらいたいのは、やはり「ラーメン」です。

 注文してから「ラーメン」が提供されるまでに要する時間は5分程度。無駄な動きを徹底的に排した華麗なオペレーションに目を奪われている間に、マイラーメンが完成。恭しくカウンター上に供されました。


スープから立ち上る香りの麗しさも、並大抵のものではありません

 見つめると吸い込まれそうになるほど深い褐色に染め抜かれた清湯スープ、姿形をひと目見ただけで丁寧な調理の跡が垣間見えるメンマ、脂が絶妙な塩梅で乗った国産豚のチャーシュー……。丼の全容が視界に入ると同時に、「間違いなく傑物である」との確定判断を下せました。

 スープ、麺、トッピング共に、奇をてらったところは見受けられず、容姿はオーセンティックな中華そばそのものでありながら、ひときわ目を引くのが、ラーメンを構成するスープ・メンマ・チャーシューの発色の美しさ。各々から発せられる褐色が、丼の中でグラデーションを構築し、巨大な塊となって網膜を刺激してくるのです。


スープとタレの素材。左がサバ節で左がイカの嘴のトンビ(※トンビはタレに使用されている)

「スープは、サバ節・ウルメ節・ウルメ煮干・平子等の魚介素材と、ゲンコツ・スジ肉・肉出汁等の動物系素材を重ね合わせたもの。それぞれの素材の本来の香りを100%引き出せるよう、炊き方やうま味のバランスにこだわりました。特に悪戦苦闘したのは、多岐にわたる素材のうま味を上手くバランスさせること。黄金比を探り当てるまで、かなり苦労しました」と佐藤店主。

 こうした、針の穴に糸を通すがごとき緻密な調理工程を経て完成したスープは、「サバ節と香味油の相乗効果によって、ここまで琴線に触れる艶やかな香りが表現できるのか!」と、思わず驚嘆してしまうほど芳醇で気高い香気を放っています。

 魚介素材に由来する輻輳する滋味を、動物系素材の重厚なコクが堅固な土台となって支え抜く……まさに素材の魅力をこれでもか! と言わんばかりに詰め込んだ逸品。

 すするたびに口の中で活き活きと躍動する山海の恵みの滋味と、鼻腔を通じて快楽中枢を直撃する煌びやかな香りに、ただただ感動。レンゲを持つ手が全く止められませんでした。


プリッとした食感で、スープとの相性が良い自家製麺

 このスープに合わせるのが、うどん用の製麺機を用いて作られる自家製麺。

「麺についても、スープと同様、香りのクオリティを極限まで高めるというコンセプトの下でつくりました。結果として、他のどの店でも味わえない『えーちゃん食堂』ならではの麺ができたと自負しています」(佐藤店主)

 スープを寸分の目算の狂いもなく絡め取り、雄々しく口元まで引き上げる自家製麺。香りの芳しさはもちろん、規格外のしなやかさと驚異的なコシの強さを兼ね備え、どれだけすすってもすすり飽きることがありません。

 チャーシューは、本年(2023年)3月末をもって惜しまれながら店を畳んだ、オーセンティック中華そばの名店『びぜん亭』(飯田橋)の店主に教えを請い製法を伝授してもらったという、国産豚のバラを使用したもの。

 脂身の甘みふくよかで、舌上で泡雪のようにハラリととろけるチャーシューは、甘辛い下味が肉の隅々にまで沁みわたり、際限なく食べ続けられそうなほど卓越した仕上がり。チャーシューだけを一品料理として提供しても、間違いなく人気になりそうな旨さです。白米とも非常に相性が良さそう。

 ラーメンと無我夢中に向き合っているうちに、気が付けば、丼が空っぽになっていました。

「少なくとも75歳になるまでは、ラーメン職人として生涯現役で厨房に立ち続けていたいと考えています。そのためには、地元に根付き、お客様から愛されるお店を育てていきたい」と、意気込みを語る佐藤店主。

 店主の目標が叶い『えーちゃん食堂』に輝かしい未来が訪れんことを。心からエールを送ります。

佐藤栄市店主のプロフィール

・ほぼ独学の状態で、練馬区(大泉学園)にて『初代えーいち』を月に一度、間借り営業。その後、『株式会社凪スピリッツ』に入社し、職人としての腕を徹底的に磨き上げる。

・『ラーメン凪』での修業時代に、惠本将裕氏(同氏も『凪』の出身)から「自由に味づくり、店づくりをして構わない」と言われたことを契機に、惠本氏が率いるグループへと移籍。『らーめん惠本将裕(2014年9月開業・中目黒)』、同店のフルリニューアル店舗である『中華そばえもと(2021年3月開業・中目黒)』の店長を歴任する。

・『中華そばえもと』閉店後、『まるえ中華そば(巣鴨)』での勤務を経て、2023年4月、『えーちゃん食堂(不動前)』の店主として待望の独立を果たす。『えーちゃん食堂』の営業時間は早朝から昼までと変則的だが、店主の味を求め、日々、多くのファンがお店へと詰め掛けている。

・営業時間が朝7時半〜13時と変則的である理由は、「近隣に『ラーメン二郎目黒店』、『支那そばかづ屋』など、錚々たる名店が建ち並んでいるので、それらのお店と競合しない時間帯に営業し、着実にお客さんからの支持を獲得していきたい」との想いから。

・修業時代は『惠本グループ』におけるラーメンづくりの要の部分を任されるなど、佐藤氏の腕の良さには定評があり、日頃から付き合いがあるラーメンマニアの知人を含め、同氏の独立開業を待ち侘びていた者は多数。

●SHOP INFO

店名:えーちゃん食堂

住:東京都目黒区下目黒3-4-6 サンライズ目黒1F
TEL:非公開
営:7:30〜13:00(材料無くなり次第終了)
休:水曜、不定期で火曜

●著者プロフィール

田中一明
「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。

引用元:BIGLOBEニュース

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