【練馬】広徳禅寺塔頭圓照院の中でいただく〝精進料理〟『泉竹 IZUCHIKU』
2022年夏新規オープン
本日ご紹介させていただくのは、2022年8月に練馬区桜台に新しくお店を構えた 〝精進懐石料理の店〟『泉竹』さんです。
8月の終わりにプレオープン、9月より営業スタート、そして10月からはメニューも増やし本格的に営業を始められたということで、この度ネリマンタイムスにて取り上げさせていただくこととなりました。
京都由来の〝伝統精進懐石料理〟を提供するお店、という練馬区では非常に珍しいお店。
今回は、精進料理のコースをいただいてきましたので、是非最後までご覧いただければと思います。
普段使いのお店、というよりは、少し特別な日に利用したい、、、そんな非日常を味わえるお店へこれからご案内致します。
練馬駅より徒歩15分
場所は、練馬駅北口から徒歩15分。少々歩きますが、道は基本まっすぐの一本道なので迷いません。
しばらく歩くと目の前にこんな石垣が見えてまいりました。
そして、『泉竹』と、本日伺うお店の看板が表示されておりました。どうやらここの様です。
石垣の横を歩き、石神井川沿いに出ると、今回の目的地である『泉竹』さんの入り口に到着いたしました。
ちなみに、豊島園駅からも徒歩15分程の距離、豊島園からは石神井川沿いを歩くと到着致します。
広徳禅寺塔頭圓照院
お店のご紹介の前に、お寺のご紹介をさせていただきます。
広徳寺(こうとくじ)は臨済宗大徳寺派で、戦国時代に箱根湯本の早雲寺の子院として、小田原に建立されました。豊臣秀吉の小田原攻めにて焼失、その後1590年頃、徳川家康により江戸の神田に広徳寺と称して建立、1635年に江戸城拡張工事に伴い下谷(現在の上野駅前)へ移転しました。下谷での寺地は「ビックリ下谷の広徳寺」と言われる程広大な寺院になり、18もの大名家を檀家に持ち、塔頭15院を擁していました。
しかし明治維新後、関東大震災により塔頭含めほぼ焼失、その後都市計画に伴い、1978年に練馬区桜台へと移転を完了しました。
墓地も含めた境内はおよそ2万平方メートルで、広大な敷地内には建物や立派な庭園などがあります。その静寂に包まれた寺域は東京都内とは思えない空間で、特に紅葉の季節は美しい景色が広がります。
広徳寺は残念ながら境内も墓地も基本的には拝観謝絶となっているため外からしか見られませんが、圓照院は8月より完全予約制の料亭として内部へも入れるようになりました。
圓照院(えんしょういん)は、広徳寺が神田に再興された頃に造られた塔頭で、広徳寺の移転に伴いこちらも練馬へと移りました。現在の建物は1927年に再建されたものだそうです。
100年近く前に建てられたお寺の中で本格的な日本料理が味わえるお店、気になる内部の様子を少し公開させていただきます。
お寺の中にあるお店
入り口に到着するとお店の方が「ご予約の○○様ですね」と出迎えてくださいました。完全予約制ならではの丁寧な対応に、お店に入る前から優雅な気分。
靴を脱いで、店内へ。お寺をそのまま利用しているということで、第一印象はお店というかお寺そのもの。
中庭を眺めながら長い廊下を進むと左手に本堂が見えてきました。本堂は撮影禁止ということでお写真はございませんが、来店した方は皆様本堂の前を通ってお部屋に向かうこととなります。他にも茶室など当時の姿で残っておりました。
更に奥へ進み、本日お食事をいただくお部屋に案内されました。
ここは元々書院だったそうですが、畳にテーブルが不思議と違和感なく、中庭を眺められる席に着くとなんとも言えない心地の良い空間。
お寺風の建物ではなく、本物のお寺の中だからこそ味わえる特別な空気にしばらく浸ってしまいました。
こんな場所でお食事がいただけるなんて、楽しみです。
泉竹さんの歴史
お食事の前に『泉竹』さんの歴史をご紹介しましょう。
元々店主である鈴木さんは京都にある「泉仙」というお店で精進料理、京会席、茶懐石のいろはを学び、料理人としてスタート。
その後、世田谷にある「泉仙」を任され、今から約十年ほど前に独立、世田谷の支店を譲り受けるかたちになったそうです。
その際、明治時代の創業時の名称『泉竹』も同時に譲り受け、今年の1月まで世田谷で営業しておりました。
創業時の名称を引き継ぐとは、とても重みがありますね。
長引くコロナの影響などもあり、残念ながら世田谷での営業は終了してしまいましたが、心機一転この夏より練馬区桜台にある 〝広徳禅寺塔頭圓照院〟にて再び『泉竹』として営業を再開されました。
「精進料理」「会席料理」「茶懐石料理」が食べられるのは日本でここだけ!?
『泉竹』さんは、伝統的な日本料理を代表する料理でもある「精進料理」「会席料理」「茶懐石料理」という三種類の料理を、日本で唯一食べられるお店です。
例えば、お出汁ひとつとっても三種類それぞれ違うものを使うそうで、仕込みの事を考えるとやはり完全予約制になるのは納得ですよね。味の決め手でもある『泉竹』さんのお出汁は料理に合わせて数種類の昆布を使った昆布出汁を主に使用しております。
では、その三種類のお料理についてご紹介させていただきます。
精進料理とは
肉や魚などを使用せず、主に豆腐や野菜などの植物性の食材のみを使用した料理。
仏教と密接に結びついた料理で、仏教の戒律に基づき、「殺生(生き物を殺すこと)」を避け、「煩悩(人を苦しめ煩わせる心)」を刺激しないため生まれた料理と言われています。
中国から日本へもたらされた普茶(ふちゃ)料理を日本で再現したのが現在の精進料理の始まりとのこと。
もともと仏教の戒律を守る修行僧の為の食事だった精進料理ですが、現在では四季折々の旬の食材を楽しめる食事として一般的にも知られる様になりました。
仏教では、掃除や洗濯など日常生活における行動や、食事のマナーや作法、後片付けまで、食にまつわる行動の全てを修行の一環と考えています。
手間ひまのかかる精進料理を調理する工程も修業の一環として捉え、「食材に対して敬意を持つこと」「道具を大事にすること」「食べる人の立場になって作ること」「手間ひまを惜しまないこと」など、料理をする上での心構えも必要なんだそうです。
一言で精進料理と言ってもとても奥が深い事が分かりますね。
会席と懐石の違い
〝かいせき〟とは何か?
何となくわかっている気がしていましたが、〝会席〟と〝懐石〟一体何が違うのかと聞かれたら、、、なかなか返答に困る方が多いかもしれません。
イメージ的には会席は宴会料理、懐石はもう少し高級なイメージ、そんな感じでしか認識していなかったのですが、今回お話を伺い二つが全くの別物だということを知りました。
〝会席料理〟とは一般的にお酒を楽しむためのお料理、武士が客人をもてなすために作った〝本膳料理〟が元となっているため華やかで、現在の日本食のコースの様な料理です。
もう一つの〝懐石料理〟とは最初に一汁三菜が出るお茶を迎えるためのお料理のことを指すそうです。お茶と一緒に体を温め空腹をやわらげてくれる、会席料理と比べると身体に優しい軽めのコース。
ちなみに懐石料理の「懐石」は、修行僧が一時的に空腹をしのぐために懐へ入れていた「温石」が由来だそうです。興味深いですね。
『祇園』9680円
今回注文したのは、精進料理のコースより『祇園』9680円
基本的にはコース料理のみを提供しているお店で、3日前までにコースを予約する必要がございます。
今回初訪問という事で、やはり他では滅多に食べられない本格的な精進料理を注文させていただきました。
では、コース内容を順番に一品ずつ紹介させていただきます。
【前菜】
秋茄子 胡麻クリーム
【一の鉢】
胡麻豆腐 黄菊
【二の鉢】
白酢和え 大徳寺麩 茗荷 厚揚甘辛煮
【御椀】
土瓶蒸し 松茸 銀杏 三葉 酢橘
【雲片】
甘露梅日の出揚げ
【煮物】
菊花蕪含め煮 占地 人参 大根 茄子 絹さや
【小鉢】
柿和え 胡瓜 大根 人参
【揚げ物】
生のり揚げ 南瓜 丸十 蓮根 青唐 扇昆布
【食事】
木の子御飯
【香の物】
三種
【止碗】
赤出汁
【水菓子】
盛り合せ
約1時間かけてゆっくりと精進料理のコースを楽しませていただきました。朱色の漆椀に盛りつけて提供される料理の数々。見た目の綺麗さと、繊細なお料理に感動の連続。美味しくいただきました。
メニューは月毎に変わるとのこと。松茸の土瓶蒸しは秋ならではの一品。
そして、一番感動したのが、中盤で提供された『甘露梅日の出揚げ』
紫蘇の葉に漬け込んだ南高梅を4日間かけて少しずつ酸味を抜き、蜜を少しずつ加えながら4日間かけて煮込む、更に途中で梅に70箇所も針で穴をあける作業も加わるとか、、、気の遠くなる仕込み作業ですね。
手間ひまかけて作った甘露梅に薄衣をつけて揚げたこちらのメニューは泉竹さんの看板メニューとのこと。
梅干しとは思えないほどの甘さと、種の周りに残るほのかな酸味がなんとも言えないお味、ここでしか食べられない一品なのではないのでしょうか。
大変美味しくいただきました、ごちそうさまでした。
店主さんインタビュー
今回は、是非ともこちらの『泉竹』さんを取材させていただきたい と、お忙しい中お時間をとっていただき、お話しを聞かせていただきました。
『まずはゆっくりとお食事を楽しんでいただいて、その後にお話ししましょうか』という店主鈴木さんの優しいお気遣いのおかげで、まずはゆっくりと精進料理を味わい、お食事の後インタビューさせていただく事となりました。
見るからに優しいお人柄の店主の鈴木さん、掲載用にとお願いするとマスクを外して一枚写真を撮らせてくださいました。
お店の歴史や精進料理のお話、会席と懐石の違いなど様々なお話しを聞かせていただきましたが、中でも印象的だったのが鈴木さんの食材や料理に対するこだわりと、食べる人に対しての想いです。
鈴木さん曰く『料理は手間と愛情』
確かに今回いただいた精進料理は身近にある食材を使用していますが、そんな素材をいかに手間ひまかけて愛情をこめて作ったか、というのが一品一品から伝わってくる、そんなコース料理でございました。
お話を聞いていても、『本物の精進料理をお客様に提供したい!』そんな鈴木さんの気持ちが伝わってきて、より一層本日のコース料理が価値のあるものに感じられました。
今回の取材を通じ、料理人の方はこんなにも食べるお客様の事を考えているのか、ということがよく分かりました。そして、京仕込みの技を生かして正統派日本料理を提供してくださる鈴木さんが、手間と愛情をこめて作り出す和食の世界に感動致しました。
初めて食べた本格精進料理、良い経験となりました。ありがとうございました。
まとめ
「精進料理」「会席料理」「茶懐石料理」という普段あまり味わうことの出来ない日本を代表する料理が食べられる都内でも珍しいお店。
作られた空間ではなく、本物の歴史あるお寺の中という〝非日常の空間〟の中でいただくコース料理は忘れられない思い出になりました。
実際にお店に行ってこの空間でお食事をしていただけたらきっと何か感じるものがあると思います。
より多くのお客様に一度足を運んで頂きたい、ということで今月よりお弁当スタイルの昼懐石メニューがスタート!
こちらは5000円と6000円の二種類。
少し特別な日に、優雅な昼懐石を召し上がってみてはいかがでしょうか?
お寺の中で楽しむ和の味を是非一度お試しください。
※掲載にあたり、一部画像や説明をお店のホームページから抜粋させていただきました。
営業時間:11:30〜20:00 ※完全予約制
定休日:なし
住所:東京都練馬区桜台6-43-3 圓照院内
電話番号:03-3557-7305
アクセス:西武池袋線『練馬』北口より徒歩15分
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