【武蔵関】十割そばの名店『にはち』

“そばは手繰(たぐ)る”。

ネリマンタイムスの読者の皆さんはこんな言葉を聞いたことがあるだろうか。
“手繰る”とは、そばを食べる時の表現のひとつとして使われる。
(江戸っ子の粋が現れている感じがして好きな響き。)

父方も母方も祖父母の代から東京の私は、一応江戸っ子なのか?
うどんよりそばが好きだ。

そば好きといっても、“十割そば派”と“二八そば派”がいるのだが私はどちらもそれぞれ良さがあると思っている。

十割そばとはその名の通り、小麦粉を使わずに100%そば粉だけで打ったそばのこと。
コシもありそばの香りが純粋にしっかり味わえる。

二八そばとは、8割のそば粉に対して小麦粉を2割混ぜてうつ。
この比率でうつと十割そばに比べて食感がなめらかになり、つるりとした喉越しで食べられる。

ここでの紹介もラーメンや中華料理屋が続いてしまったので、今回は趣向を変えて(冒頭で蘊蓄を語ってきた…)もちろん“そば”とする。

そういうわけで訪れたのが武蔵関の人気蕎麦店『にはち』。

西武新宿線武蔵関北口を降りてバス通りを北上する。
石神井川に架かる庚申橋を渡るとすぐに見えてきた。

『にはち』というからには、二八そばのお店だと思うのですが!!

なんとここは十割そばとのこと!!

なぜ、にはちとしたのか?昔は二八そばだったのか?
気になったがまずは暖簾をくぐりお店に入ることに。

「ごめんください」

ざっと見渡したところ、席は4人掛けが3席に2人掛けが2席。
奥のテーブルに1組の夫婦がいた。




テーブルにはとっくりとおちょこが置かれている。
平日の昼間から蕎麦屋で一杯できるとは、なんともオツなもので羨ましい限り。

私は2人掛けの席へ。
席につくと、温かいお茶が運ばれてきた。

おぉ~そば茶!
単純かと思われるかもしれないが、蕎麦屋のそば茶にやはり嬉しい気持ちになった。

私は普段から韃靼そば茶などのそば茶を家でも飲むのだが、蕎麦屋で飲むそば茶はさすがに香り高くて美味しい。

メニューを眺める。
そのお店のそばの味をシンプルに味わうには、『もり』だと個人的には思うのだが少し変化をつけたくなるのがこれ人情というもの。

田舎というメニューがあった。
田舎とは粗挽き太打ちと書いてありこちらも気になったのだが、残念今日は売り切れということだ。

鴨汁(1480円)。
胡麻汁(1120円)。

最後はこの二つで迷ったがここは胡麻汁に。
(池波正太郎も愛したという神田まつやの胡麻が好きなのだ)

注文をして待っている間、やることもなかったのでメニューをまたじっくり眺めてみた。

わさびいも(480円)。
たたみいわし(580円)。
玉子焼き(790円)。

どれもそばとお酒とも相性が良さそうだ。
次来るときは、熱燗につまみもいいななんて思う。

そうこうしている間に、胡麻汁が運ばれてきた。

胡麻汁 1120円

十割そばと聞くと濃い色のそばを想像する方もいると思うのだが、うっすらと綺麗なほとんど白色に近いそばだ。

どうれ、一つ手繰ってみますか。

(ずずっ)

お~これは想像した以上のしなやかなこし!
それなのにつるつるっとした食感。

十割そばなのに喉越しでも味わえる。

もう一口食す。
新そばの時期以外、そばというのは香りが鮮烈に口に広がるわけではないのだが、それでも上品に広がるそばの香りが心地よい。

胡麻汁だがこれがまた大変美味しい。

濃厚だけども甘すぎず、鮮烈な胡麻の風味で溢れている。
胡麻好きにはたまらない凝縮感。

この胡麻汁がそばと絡むとこれまた絶品。最高です。

そばファンに怒られてしまう表現だったら大変申し訳ないのだが、細めのパスタとカルボナーラソースが絡むようなと言ったら想像頂けるだろうか。

どうれ。添えられた一味唐辛子もまぜて食べてみる。

濃厚な胡麻汁がぴりっと引き締まってこれはいける。

喉越しでつるっと、あっという間に食べ終えてしまった。
(ここは200円増しで大盛にしておけば良かったかなと後悔。)

蕎麦屋でそばを食べる楽しみは、何といってもそば湯を飲むことではないだろうか。
いや、むしろそばの価格というのは“そば湯の値段も含まれている”と、思う。

そば湯を飲むようになった歴史は長く、江戸時代までさかのぼる。
元々は信州地方で飲む習慣が生まれたという。

栄養価も高くルチンが豊富に含まれているので美容にももってこいだ。

そのそば湯。
なんと土瓶で運ばれてきた。

さっそくそば湯を注いでみる。

これまた濃厚なそば湯だ。
ポタージュのようにとろとろとしている。

一口、飲んでみる。

これは驚いた。胡麻の風味にちっとも負けない濃厚なそば湯だ。

それでいて胃に優しく染みわたる。

気付いたら土瓶、全て飲み干してしまった。
濃厚で香り高く大変美味しいそば湯であった。

ごちそうさま。

蕎麦屋でそばを手繰る。
これは平凡な日常の中で心が満たされるとても贅沢なことではないだろうか。

そんな想いを巡らせながら、春の訪れを感じる昼下がりの石神井川を歩いた。

店名:にはち
定休日:火曜日
営業時間:11:30~14:30(L.O.) 18:00〜21:00(L.O.)
住所:練馬区石神井台7-9-6
アクセス:西武新宿線 武蔵関駅北口より徒歩2分

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